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比嘉大吾の15連続KOは最高に濃い。
世界戦を含めた記録は日本で唯一だ。
posted2018/02/05 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBC世界フライ級タイトルマッチが4日、沖縄県立武道館で行われ、チャンピオンの比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)が同級9位の挑戦者、モイセス・フエンテス(メキシコ)に1回2分32秒KO勝ち。2度目の防衛を飾るとともに、15連続KO勝利の日本タイ記録を達成した。
まさか1ラウンドで決着がつくとは予想していなかった。挑戦者のフエンテスはWBO世界ミニマム級王座、WBO世界ライト・フライ級王座(暫定)を獲得してきたキャリア豊富なメキシカン。2016年大みそか、田中恒成(畑中)とWBO世界ライト・フライ級王座決定戦を争い、いいところなく5回TKO負けを喫しているが、このときは減量苦やマネジャーとの確執で、かなり状態が悪かった。
そこでフエンテスは立て直しを図ろうとクラスを上げ、トレーナーを含むチームのメンバーを一新。試合直前、近い筋からは「前回のフエンテスとはまったく違う。比嘉が負けるとは言わないけど、そう簡単にはいかない」という情報を耳にしていた。
挑戦者は試合前の控室でも余裕たっぷりだったというから、それなりの自信を持っていたことは間違いないだろう。
右を顔面にもらい、ガードを少し上げた。
3階級制覇を目指す挑戦者の自信は、リングの上で形になって表れた。比嘉がオープニングのジャブを放ち、2発目のジャブを打ち込むと、長身のフエンテスがすかさず右をかぶせ、その拳がチャンピオンの顔面をとらえたのだ。
ジワリと圧力を強めるフエンテス。ここで比嘉はフットワークを使い、ガードを気持ち高くしてディフェンスの意識を高める。見ているファンにはパンチをもらって少し弱気になったように見えたかもしれないが、比嘉は挑戦者の攻撃を見極めながら、カウンターのタイミングを計っていた。