藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
欧州サッカーで指導者改革が進行中。
藤田俊哉「日本もS級の枠を拡大」
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byToshiya Fujita
posted2018/02/01 11:30
リーズの現場レベルでも多士済々な指導者がそろう。その中で若手指導者が出てくるのも欧州サッカーならではの面白さだ。
代表87試合出場の選手がライセンス特例受講できず。
KNVB (オランダサッカー協会) やCBV (プロコーチ協会) は、この深刻な不振から脱却しようと中長期計画を打ち出して改革を進めている。私が昨シーズン参加したコーチ協会の総会では、ロナルド・クーマンをメインスピーカーに呼び、オランダサッカーの方向性について議論していた。
プレースタイルやコンディショニングに関しても、これまで以上に最新のテクノロジーを積極的に取り入れる方向に進むことになる。もちろん最も重要なのは、それをどのように活用し、結果に繋げるかということなのだが……。
リーグ全体を見ても、今やドイツやベルギーから監督を招聘するクラブも増えており、状況は変わりつつある。コーチングライセンスの取得も、2017-18シーズンから大きな変化があった。これまではプロ選手としての実績を考慮して特例でのライセンス取得枠を認めていたが、それが認められなくなったのだ。
下のカテゴリーから準備をして指導経験を積まなければ、UEFA Proライセンス講習の受講資格は得られない。アヤックスで長年プレーし、スペインやイングランドでも活躍、オランダ代表87キャップを持つヨン・ハイティンガ(アヤックス・アカデミーコーチ)が、特例受講を認められなかった。それは現地で話題になったほどだ。
引退した選手がすぐ監督になれるような形があれば。
やはり背景には、ドイツがいち早く採用した政策――選手実績がない優秀な指導者を見落とすことなく現場で生かす――が実っていることがある。またこの流れは、オランダのみならず欧州全体に広がっていくだろう。
だが私の本音としては、ドイツ発の流れに沿う形で、オランダのいろんな制度が変わってしまうのか? という思いもある。特別な経験をしてきた選手が引退後すぐに監督となり、指導者として活躍する。その姿を楽しみにするサポーターも多いはず。
たとえば、引退した選手がすぐ監督になれるようなカリキュラムがあれば更に可能性が広がるのではないか? 日本に置き換えれば、中村憲剛のような経験があり、ピッチを俯瞰してみることができる選手が、引退後すぐに監督になって川崎で活躍したら。そんな姿を楽しみにしているサポーターも多いだろう。
だからこそ、そういった可能性は残しておきたい。一度閉ざしてしまったドアを開けることは簡単ではない。だからどちらか一方に寄り過ぎてほしくないと思うのだ。