ぶら野球BACK NUMBER
アラフォーの星野仙一は強烈だった。
「巨人軍と面白く戦う」という奔放。
posted2018/01/17 11:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Kyodo News
子どもの頃、テレビの中の星野仙一が怖かった。
約30年前、中日監督に就任したばかりの若き“燃える男”はまるで過激なプロレスラーのようだった。派手に喜び、全身で怒り、乱闘時には血相を変えてベンチを飛び出し、オーバーアクションで巨人の王貞治監督に向かって「ゴチャゴチャ言わんと、誰が一番強いか決めたらええんや!」的に拳を突き出す。あの暴れん坊のクロマティでさえ、自著で「あいつは狂ってる」と恐れた闘将の姿。
ここ1週間、現役時代から青年解説者、第1期中日、第2期中日、阪神、楽天とそれぞれの監督時代の星野本を時系列順に読んでみたが、圧倒的に面白いのは'80年代に出版されたものだ。
まだ野球界の大御所ではなく、生意気なアラフォー星野仙一にはこれから成り上がっていくもの特有の輝きと勢いがあった。現役引退後はNHK『サンデースポーツスペシャル』のキャスターを務め、CMや講演に引っ張りだこで年間3億円以上を稼ぎ出し、女性週刊誌では「不倫したい男No.1」に選ばれる30代後半の男盛り。
今読むと、そのすべてが新鮮だ。今回の『ぶら野球』は、そんな'80年代の自由な風が吹く知られざる星野本を紹介していこう。
巨人戦勝利後のインタビューは男のエクスタシー。
【『星野仙一の巨人軍と面白く戦う本』(文藝春秋/1983年4月10日発行)】
いきなりだが、現役引退した直後の翌’83年春に出たこの本は強烈だ(ちなみに発行は文藝春秋)。タイトルからして危険な香りが漂っている。
36歳の星野仙一が『オレと巨人』をテーマに語り倒した一冊の目次を確認すると、“ヘタクソな土井に打たれるなんて”、“巨人戦前は3日間女体を避ける”、“ウォーリーとの大ゲンカ”、“「遊びでも巨人にまけるな」と銀座へ!”と刺激的な文言が並んでいる。
ページをめくると唐突に写真付きで「巨人戦に勝った後のヒーロー・インタビューは男のエクスタシー」なんつってポエムをかます自由な構成だ。