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明大ラグビーは今度こそ甦るか。
新コーチが語る帝京大との差とは。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2017/12/21 07:00

明大ラグビーは今度こそ甦るか。新コーチが語る帝京大との差とは。<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

12月3日、秩父宮ラグビー場で行なわれた早明戦勝利の瞬間。両手を突き上げる背番号4が古川満主将。

北島監督が亡くなった'96年度が最後の大学日本一。

 ともあれ、明大が大学ラグビーの主役の座から滑り落ちて久しい。大学選手権最後の優勝は、北島忠治監督が亡くなり、ジャージーの襟を黒くして戦った1996年度だった。

 翌年度は決勝で関東学院大に敗れて初優勝をなさしめ、続く1998年度も決勝で関東学院と再戦し、返り討ちにあった。それ以降は大学選手権決勝にも勝ち残れないシーズンが続いている。その間、関東学院の時代があり、清宮ワセダの時代があり、そして帝京大1強の時代へと覇権は移り変わったが、ファイナルの舞台に紫紺のジャージーが立つことはなかった。

 2017年。明大八幡山グラウンドに、新しいコーチがやってきた。田中澄憲(きよのり)。サントリーで7人制と15人制の日本代表に選ばれ、現役引退後はサンゴリアスの普及・広報などマネジメント部門を担当し、昨季まではチームディレクターを務めていた。

 サントリーの採用担当として、田中は帝京大の強さをつぶさに見てきた。「このままだったら、帝京大は10連覇しますよ」。田中からそんな言葉を聞いたのは、帝京大が連覇を始めて間もない頃だった。

「上のチームも下のチームも、目的意識を持っていい練習をしている。試合に出るメンバーだけでなく、どの部員にも役目があって、学生コーチもレギュラーに対して対等に発言するし、レギュラーの選手もそれをしっかりリスペクトして聞いている。試合中のコミュニケーション能力の高さも、そういうところから生まれていると思う」

セオリー通りのラグビーが、帝京大との大きな差。

 田中は、サントリーではエディー・ジョーンズ、大久保直弥、アンディ・フレンド、沢木敬介という歴代の指導者を裏方として支えた。

 彼らのコーチングやチームマネジメントを観察し、接する選手がどう受け止め、どう取り組み、どう結果につなげるかを見つめてきた。そんな目の肥えた田中が、ほぼ20年ぶりで母校に戻ったとき、衝撃を受けたのが、選手たちが決めつけたプレーしかできないことだったという。

「こういうときはこうする、というセオリー通りのラグビーしかできないんです。もちろんラグビーにセオリーはある。だけど、そこには裏と表があるし、常にそれがベストとは限らない。目の前で起きていることに対して、よりベターなオプションを判断して、味方とコミュニケーションを取って連動していくスポーツなんです。決めつけでは勝てないんです。帝京大が長けているのはそこです」

【次ページ】 「コミュニケーション力」こそ強さの最大の秘訣。

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