サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
この0-1は「惜敗」と呼べるのか。
ロシアW杯の展望は限りなく逆境。
posted2017/11/15 12:10
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
これで、良かったのだ。
くしくも4年前の11月に、日本はベルギーに3-2で勝利した。敵地ブリュッセルでつかんだ勝利によって、アルベルト・ザッケローニ監督と選手たちが自信をつかんだだけでなく、ブラジルW杯へ向けた期待の高まりへとつながっていった。
それが間違っていた、とは言わない。しかし、7カ月後のブラジルW杯で日本はグループステージ敗退に終わり、ベルギーはベスト8進出を果たすことになる。
テストマッチとはつまり、そういうものだ。肉でも魚でもない、メインディッシュというわけでなく、冷めきったピザのように味気ないものでもないが、人々の記憶に長く残るものではない。残す必要がないものである。
観衆の反応は分かりやすい。極東からやってきたFIFAランキング44位のチームを相手に前半を0-0で終えれば、ブーイングに包まれてもおかしくない。ところが、ハーフタイムを告げるホイッスルが鳴り響いても、2017年11月14日のスタジアムはほとんどざわつかなかった。
試合終了時も同じだった。日本をブルージュに招いたホストは、'16年9月のスペイン戦を最後に14試合連続で負けていない。FIFAランキング5位のベルギーにとって、日本相手の1-0という結果は満足できるものではないはずだが、選手たちがブーイングを浴びることはないのである。
守備の狙いも整理され、献身性も評価できるが……。
そもそもこの試合には、正GKのティボウ・クルトワも10番のエデン・アザールも出場しておらず、ケビン・デブライネは60分過ぎで退き、72分に唯一の得点をあげたロメル・ルカクもその直後に退いている。真剣勝負ではないことを、観衆も分かっていたわけだ。
日本の戦いが、評価に値しないわけではない。ゲームの入りは悪くなかった。ディフェンスの狙いも整理されていた。前からハメるところとそうではないところを、しっかりと使い分けていた。
1人ひとりの献身性も評価できる。なかでも際立ったのは井手口陽介だろう。
ブラジル戦に続いてこの日も出足鋭くボールにアプローチし、ベルギーの攻撃を制限した。フル代表では初めてとなるトップ・オブ・トップとの戦いでも、この21歳はチームに必要な選手であることを示した。