プロ野球PRESSBACK NUMBER
山田哲人の神々しさを称えたい。
本塁打王の盗塁はいつから減ったか。
posted2017/10/24 11:00
text by
堀井憲一郎Kenichiro Horii
photograph by
Kyodo News
スワローズ山田哲人は2017年は14盗塁に終わった。ホームランは24本だった。
かつての同期トリプルスリー、ホークスの柳田悠岐も、打率と本塁打はスリーだけど、盗塁は同じく14だった。
残念だ。
ホームランをたくさん打つのに、それでも隙あれば盗塁しようとする選手が私は大好きだ。
そこにこそ、ベースボールの根本があるように感じられるからだ。
とくに、自分で野球をやるようになって(いわゆる休日の草野球です)そうおもうようになった(数えると25年くらい草野球をやっている)。
野球の攻撃では、ひとつでも前の塁に進むよう、常に狙っていないといけない。ホームランを打つのはなかなかむずかしいが、隙をついて前に進むのは、隙さえあれば、誰にでもできる。
だから見せる野球でも盗塁が多いほうが好きだ。
どんどん盗塁して、球場がスリリングな空間に変わっていくのが、楽しい。
どんどん盗塁すると、どんどんアウトになることもある。
それでもいい。それでも走る。それがベースボールの精神のように、私にはおもえる。盗塁失敗アウトをもったいないとは考えない。それがベースボールではないだろうか。
賛同は少ないようにおもう。
少年野球やクラブ活動では育ちにくそうな考えだろう。
みんな、走れ。ぎりぎりだったら、走れ。
だからこそベースボールの真髄に近いと、私はおもっている。
みんな、走れ。ぎりぎりだったら、走れ。
それがベースボールだ。
塁に出たら、いつも二塁を、三塁を、そして本塁を目指す。
この、前に進もうとする姿を美しいとおもう。
究極に美しく、虚しさをはらみ、そして衝撃を与えるのは「本盗」だろう。本盗を果敢に試みる者こそ、女神に選ばれた人である。