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琉球はBリーグの地域格差を覆すか。
全国から選手、監督が集まる理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2017/10/14 09:00
沖縄は米軍基地の存在もあって、バスケットボールとの距離が近い。その土壌はゴールデンキングスの大きな財産だ。
守備重視の監督が勝負所で選んだ攻撃策。
選手としての経験がない指導者が陥りがちなのが、選手に指導するときにデータに頼りすぎてしまうことだ。
確かにコートの上でのパフォーマンスは、数字に表れる。しかし選手が実際にプレーするときに、そうしたデータを頭にいれてプレーすることはない。データだけにこだわると、選手としてのキャリアがない指導者はなめられて、求心力を失う。
その意味で、佐々が得意とするメンタル面でのアプローチは、カリスマ性のある元スター選手が得意とする手法のはずだ。
この2試合も、守備を強調してきた佐々でありながら、残り4分8秒のタイムアウト明けからは岸本と、アルバルク東京からやってきた二ノ宮康平の2人のガードを送り出した。
守備では高さの面で不利になる。しかし、守備に多少は目をつぶっても攻撃で力をねじふせる手を打ったのだ。そして狙い通り、残り時間を14-7で相手をねじふせて、逆転勝利をつかみとった。
「守備に目をつぶりたくはないですけど、こういうゲームになった以上、点を獲らないといけなくなる。むこうもかなりのペースで点を決めていたので。そして、僕らはメンタルゲームをしている。良いオフェンスを体現するには2ガードにしたほうが楽だし、選手たちも楽しく見ていたと思うんですよ」
勝つことでチームが強くなる、という方法。
そのように振り返った佐々は、あわせてこんな感想も漏らした。
「理想としては、全員でプレータイムをシェアしながらやっていきたいです。でもうちは若いチームだから、成功体験がないと自信がなくなってしまう。1節の2試合目は、勝ったんですけど4Qがなかなか苦しかったので、雰囲気は……。
『試合内容については、俺が反省するよ。選手は頑張って勝っているんだから自信をつけてよ』と思うんですよ。だから、今日は大きな勝ちでした。久しぶりにロッカーも明るい感じだった。それは俺も嬉しかったですね」
新しいチームが力をつけていくためには、正しい過程を踏んでいかないといけない。しかしチームとして成長していくために、勝利という結果を重ねて選手が自信を深め、プレー内容を向上させていくという方法論も存在する。その意味で、名古屋戦で佐々が見せた大胆な采配は、この先大きな価値を持つものになる可能性がある。