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実は世界の100m走は遅くなっている?
日本人の五輪決勝は夢物語ではない。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2017/09/16 08:00

実は世界の100m走は遅くなっている?日本人の五輪決勝は夢物語ではない。<Number Web> photograph by AFLO

ウサイン・ボルトは陸上界の基準そのものを大きく変えた。彼の引退は100m走にどんな影響を与えるのだろうか。

2012年には、銅メダルが9秒7台という異常事態。

 2009年、ボルトはベルリンの世界選手権で9秒58という信じられない世界記録をマークし、それに引っ張られるようにしてジャマイカのヨハン・ブレイク、アメリカのタイソン・ゲイ、ジャスティン・ガトリンらがタイムを伸ばしていった。

 その競争の到達点が、2012年のロンドン・オリンピックだった。

 優勝したボルトは9秒63。2位のブレイクは9秒75、3位のガトリン(そう、この時からロンドンでは不人気だった)は9秒79で、このふたりは自己ベストをマークしている。このレースは史上稀に見るハイレベルの戦いで、銅メダルのラインが9秒79という記録に戻ることは、二度とないのではないか。

 その後、モスクワ、北京の世界選手権、リオデジャネイロ・オリンピックとボルトの優勝タイムは緩やかに下降していき、それにともなって、2位のタイムは9秒8台、3位は9秒9台へと落ちついていった。

 そして今年のロンドンの世界選手権で、ついに優勝から3位までの選手たちが9秒9台になった。もっとも、8月のロンドンは寒すぎて、短距離の記録が出るような状況ではなかったので、それを差し引いて考える必要がある。

世界は下降線、日本は右肩上がり。

 余談だが、今回の桐生の9秒98のタイムが、リオデジャネイロ・オリンピックだったら7位相当、ロンドン世界陸上だったら4位相当になる――というテレビ報道を目にしたが、条件の違うレースのタイムを比較している時点で、私からすれば“フェイク・ニュース”に思える。歴代10傑などとは違い、特定のレースと比較するのはフェアではない。リオデジャネイロでは追い風0.2m、ロンドンは向かい風0.8mだった。気温も違うし、なぜ同じ土俵に乗せるのか、私には理解できない。

 100mを取り巻く世界の状況を考えると、日本にとってチャンスだな、と思う。

 100mの世界はゆるやかに下降曲線を描いているが、日本のスプリンターたちは逆に右肩上がりだ。現役の日本人選手たちのベストタイムを整理しておこう。

【次ページ】 桐生の9秒台突入で、他の選手の可能性も広がる。

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