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世陸での衝撃はロンドンの運営面。
交通機関タダ、東京五輪はできる?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2017/09/04 07:00
ロンドンの世界陸上、4×100mリレー決勝が行われた日の会場は立錐の余地もなかった。帰り道がスムースなら、その思い出はさらにポジティブになる。
利益よりも観客のスムースな帰宅を優先。
いいのかね、このまま通ってしまっても……。
何かの間違いじゃないかと思いつつ、翌日も同じルートで帰ったら、またしてもフリー。
初日だけの特別対応ではなかったのである。オリンピックだけではなかったのである。
この高速鉄道は世界陸上の期間中、競技が終わってからの時間帯については、料金を徴収せずに、観客のスムースな帰宅を優先させていたのである! しかも、観戦チケットを持っていない人まで!
ただし、すべての電車がタダになっていたわけではない。私は競技終了後の混雑を避けるため、中日あたりから「Overground(地下鉄のUndergroundに対して、地上を走る電車)」の最寄り駅「Hackney Wick」を利用するようになったが、こちらはカード式のOysterカードをしっかりとリーダーにタッチしてから乗車するようになっていた。
想像するに、混雑が激しくなると予想される路線の駅に関しては、利益よりも観客のスムースな帰宅を重視していたのである。
大会最終日にはボランティア(とにかく明るい!)、駅係員も誘導に慣れ、駅の混雑も初日ほどではなかった。
10日間の素晴らしいオペレーションに、とにかく感謝したかった。
観戦チケットがあれば公共交通機関がタダ。
実は、これまでのオリンピックの観戦・取材の体験では、チケットを持っていると公共交通機関がタダになるケースがほとんどだ。
私の体験ではアトランタ、シドニー、バンクーバーでは観戦チケットを持っていれば、そのまま電車に乗り込むことが出来た(北京、ロンドンもそうだったような気がするが、取材証を持っていたため、定かではない)。
長野オリンピックの時は、市内の電車、長野から松本へ向かうバスでお金を払った記憶がある。よって、日本で開かれるオリンピックについては、あまりイメージが良くない。
世界陸上での体験で感じたのは、果たして東京オリンピックでは、ロンドンと同じような対応の検討がされているのか、ということだ。
別にタダにした方がいいということではない。チケットを持っている観客に対して、いま現在、どんな対応を考えているのかを知りたい。