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甲子園を今年も席巻する北関東勢。
「上位8校」と注目の1回戦カードは?
posted2017/08/06 07:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kyodo News
今夏の甲子園で前評判が高いのは作新学院、前橋育英、花咲徳栄、横浜、東海大菅生、大阪桐蔭、広陵、秀岳館の8校。東高西低と言うより、北関東を中心とする関東勢がここ数年の勢いを今年も持続している印象である。あらためて、北関東の勢いは一過性のものではないという認識が必要だと思う。
作新学院には、2005年の駒大苫小牧以来12年ぶりの夏連覇の期待がかかる。地方大会6試合中5試合が大差での勝利で、決勝は何と15-1というスコア。その中で準決勝の青藍泰斗戦だけが1点を争う接戦だった。
相手校のエース、石川翔(3年)は今年のドラフト1位候補にも挙がる本格派で、準々決勝の石橋戦ではストレートが最速151キロを計測した。この石川が唯一、先頭打者を塁に出したのが3回表。下位打線が作った無死満塁のチャンスに3番の鈴木萌斗(3年)が三塁打を放って3点を挙げ、これを2人の投手で守り切ったというところに作新学院の強さがよく表れている。
前橋育英は昨年春から5季連続で県大会を制しているが、常にその前に立ちはだかってきたのが“機動破壊”の異名を取る健大高崎。この相手としのぎを削ってきたことが前橋育英の現在の強さを作ったと言ってもいい。機動破壊を押さえ込むためには、バッテリーの守りは絶対条件。同校相手の決勝戦では3回実行された盗塁のうち2つを刺し、隙を作らなかった。
作新学院同様に複数の主力投手を擁して、そのうち皆川喬涼(3年)、丸山和郁(3年)、根岸崇裕(3年)、吉沢悠(3年)は140キロを超えるストレートをマークする本格派で、皆川は4回戦では自己最速の149キロを計測している。'13年以来の優勝が、遠いものには私には全然思えない。
花咲徳栄は甲子園を勝ち抜く必要条件が揃っている。
花咲徳栄も戦力が充実している。作新学院、前橋育英同様、他校なら背番号1を背負える投手が、清水達也(3年)、綱脇彗(3年)、野村佑希(2年)と揃い、決勝の浦和学院戦では2番手で登板した清水が7回以降、9人の打者を無安打5三振に抑えている。甲子園での戦い方をこの頂上決戦で予習できたことが大きい。
打線も強力で、1、2番がチャンスメーカーの役割を徹底すれば3、4、5番は打率4割以上を挙げる安定感でポイントゲッターとして機能。走攻守の安定感、さらに複数の好投手を擁するという現在の甲子園大会で勝ち抜くための必要条件をすべて備えているのがわかる。