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「人生、どこから狂い始めたのか……」
清原和博、ついに雑誌連載スタート!
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/07/19 17:00
まだ……歯切れよく自身を語ることはできない。しかし、訥々とした口調からは、自分にも世間にも、どこまでも正直であろうとする決意が感じられた。
野球を始めた頃の話から……苦い表情が混じり始めて。
やがて野球を始めた頃になると、苦い表情が混じるようになってきた。
岸和田リトル時代、誰よりも遠くに白球を飛ばすということに夢中になりながらも、1つの道を極めていくことの厳しさも知ったのだろう。
そして、追想が両親のことになると急にあらゆる感情があふれ出した。
慈しみも、憂いも、後悔も帯びたような何とも言えない複雑な顔になったことが印象的だった。
「お父さんは無口な人でした。朝から晩まで顔を真っ黒にして働いていました」
「お母さんの手料理で一番思い出すのは、やっぱり肉の佃煮ですかねえ……。弁当箱の中にもいつも入っていて。甘辛く煮たやつなんですけど、あの味はすごく印象に残っています」
15歳から親元を離れた少年の面影残る、その言葉使い。
無口な父の働く背中と、甘さも辛さも包み込むようなおふくろの味。
両親をいまだに「おとうさん」「おかあさん」という呼び様からは15歳で親元を離れた少年が一般社会にほとんど触れることのないまま大人になったことをうかがわせた。また、スーパースターとして歩む中で、人生の決断を唯一、相談できた両親への独特の思いを感じた。
白い壁の店、窓から見える外は初夏の快晴だった。ただ、目の前で“曇天”から“晴れ間”がのぞき、また“雨模様”へとめまぐるしく変わる清原氏の表情を見ながら、ふと思った。
この連載が求めていく「答え」はここにあるのではないか、と。