オリンピックPRESSBACK NUMBER
馬だって「転職」は簡単じゃない。
競馬→誘導馬→馬術という成功組。
text by
北野あづさAzusa Kitano
photograph bynabecci/Ryosuke KAJI
posted2017/07/09 08:00
誘導馬の初心者マークを額につけたオースミイレブン。本人(馬?)は環境の変化をどんな風に受け止めているのだろうか。
競走馬として勝ち組ではなかったが……。
今の具体的な目標は7月中旬の内国産馬場馬術選手権。元競走馬や日本で乗用馬として生産された馬のための大会で、セントジョージ賞典クラスで行われる。
ランキング上位から15頭がエントリーしている中で、オースミイレブンは現在ランキング7位。何年もこの競技に出場し続けているベテラン馬たちを相手に、どこまで戦えるか。北原がどこまでオースミイレブンの力を引き出せるか。
以前、間が北原に言ったことがある。「内国産馬選手権で勝てると思って北原さんに託したので、まずはそれを実現してください。その先も、行けるところまで行ってほしいと思っています」と。
「どの馬でもグランプリに行ける可能性を秘めていると思ってやっているけれど、サラブレッドでそこまで行くのは簡単じゃないんだよ。わかっているだろ」と北原は笑って答えたが、彼自身が誰よりもそれを期待している。
「転職」は大変だ。そもそもそれは馬の意志ではなく、馬にとってはありがた迷惑な話かもしれない。けれど人は、馬の才能を信じ、それを伸ばすことに全力を尽くす。競走馬として大成しなかった馬にも、別の世界で花開く可能性がある。
競走馬としては「勝ち組」とは言えないが、自分を信じて、伸ばしてくれようとする「上司」に出会えたオースミイレブンは、たぶん「転職成功組」だ。