松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹に「最悪」と言わせた物は?
全米OPで陥った迷路の正体は……。
posted2017/06/16 11:50
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
「最悪です」
短い一言に悔しさが凝縮されていた。
全米オープン初日。日本の期待、いや世界から優勝を期待されている世界ランキング4位の松山英樹が2オーバー、74を喫し、82位Tと大きく出遅れた。それは彼が言った通り、初日としては最悪の結果である。
だが、この日のスタートホールとなった10番のティグラウンドに立ち、手にしたドライバーを気持ちよく振り抜いて白球が堂々とフェアウエイを捉えたときは、もちろん最悪ではなかった。
その10番は、きっちりグリーンを捉え、パーで発進。11番はグリーンを外しながらもパーを拾った。
うねるフェアウェイを深いフェスキュー草が取り巻き、「どうしようかなあって感じです」と言っていた12番も13番もきっちりパーを取った。
しかしパー5の14番は、3番ウッドを握ったにも関わらず、ティショットは右のフェスキュー群の中へ。フェアウェイに出してからの第3打もグリーン奥のフェスキュー群に沈み、第4打はグリーンの対岸まで転がり落ちてバンカーへ。うまく寄せて「6」で収めたのはナイスボギーだったが、パー5で「6」という結果は、なんであれ悔しい。
だが、それでもなお、その先に13ホールも残っていたこの時点では、まだまだ決して「最悪」ではなかったのだ。
小さな岐路の積み重ねで運命が変わる日がある。
その日その日の運命は、ある1打、ある1ホールだけで一瞬にして変わることもあれば、何度も小さな岐路に差し掛かり、そのたびに岐路のどちらを進むかによって、徐々に変わっていくこともある。この日の松山の運命は、後者の進み方で、少しずつおかしくなっていった。
最初の岐路は、フェアウェイからの第2打が直接カップに沈み、大きな拍手と歓声を浴びた15番のイーグルの直後に訪れた。