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不倫騒動、相手ファンを尻で挑発!?
チェルシー退団テリーの5大逸話。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/04/22 09:00
CL決勝欠場ながらもランパードらとともに歓喜した闘将。その姿は「ジョン・テリーする」との新語を生んだ。
同僚恋人との不倫報道翌日、勝ち越し点を決める図太さ。
<2010年1月30日 バーンリー対チェルシー(リーグ戦)>
強靭な精神力を示すエピソードは、この一戦にもある。但し、勇敢か厚顔かで評価は分かれるところだが。
試合が行われたのは、前シーズンまでチームメイトだったウェイン・ブリッジの元ガールフレンドとの不倫報道翌日。ただでさえスタンドに味方が少ないアウェイゲームで、野次の集中砲火を浴びることは必至だった。
実際、『ケアフリー』というチェルシーのチャントを逆手に取った「用心しろよ、チェルシー。嫁さんをテリーと二人きりにしたらダメだ」という合唱などは、相手ファンから浴びた“口撃”では優しい部類だった。
その一戦でテリーは先発して、勝ち越し点まで決めた。さすがにゴールを派手に祝うことはなく、当人は後に動揺していたことを告白しているが、イエローカードを承知で敵の突進を止めたファール、巧みにマークを外してCKに頭で合わせた決勝点といい、その心臓にはどれだけ毛が生えているのかと思わされた。
強心臓ならではのゴールは、いわゆる「キャプテンならでは」の重大な得点もある。2009年11月のマンチェスター・ユナイテッド戦との首位攻防戦は、負ければ順位が入れ替わる一戦だったが、チームを首位に押しとどめるヘディングシュートを決めている。最終的にチェルシーは、マンUを1ポイント差の2位に抑えてリーグ優勝を飾った。
モスクワでの涙から4年後のCL決勝は出場停止も……。
<2012年5月19日 バイエルン・ミュンヘン対チェルシー(CL決勝)>
クラブ史上初のCL優勝が実現したスタジアムで、誇らしげに優勝トロフィーを頭上に掲げる主将。しかしテリーは出場停止のため、試合はチームスーツ姿でのスタンド観戦だった。その彼が、シンガードまで着用したユニフォーム姿で表彰台にいた。
副主将のフランク・ランパードも、テリーとともに一緒にトロフィーを掲げることを望んでいたという。それは'08年のCL決勝に伏線がある。雨のモスクワで行われた決戦で、決めれば優勝が決まるPKを失敗したシーンはチェルシーファン以外にも記憶に刻まれているはずだ。
大粒の涙を流し、真っ赤な目で「皆に申し訳ない。一生の心の傷だ」と俯いていた姿を知る者であれば、その傷の痛みを和らげるチャンスを得たテリーを利己的だと責める気にはなれなかっただろう。