話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
宇佐美貴史はこのまま消えるのか。
「自分に栄養を与えている段階」
posted2017/04/01 07:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
AFLO
ロシアW杯最終予選のタイ戦、ジョーカーの登場は後半39分だった。
ハリルホジッチ監督が信頼し、期待する11番はロスタイムに清武弘嗣からのクロスをボレーシュートする決定的なシーンを迎えたがジャストミートせず。何度もボックス内に侵入し、“結果”と“違い”を見せようとプレーしていたが、数分間では十分にアピールすることができなかった。
「短い時間でしたけど出れてよかった。攻撃でのイメージの共有はできたし、タイ戦も含めて呼んでもらってうれしかった。ただ、もっと試合で何かを示して代表に呼んでもらえるのがベスト。そうするためにドイツに行っているんで」
宇佐美貴史は、淡々とそう語った。
2次予選では左サイドの主軸だったが原口が台頭。
ロシアW杯最終予選は昨年9月のアウェイでのタイ戦以来の出場になったが、宇佐美は最終予選が始まって以降、代表では厳しい状況がつづいている。
ハリルの申し子として、W杯2次予選では左サイドの主役の座を争っていた。ところが最終予選のアウェイのタイ戦で原口元気がゴールを挙げると、体を張った守備でも貢献。サウジアラビア戦まで4試合連続でゴールを奪って左サイドのポジションを制した。
右サイドは今回、久保裕也がUAE戦、タイ戦でほとんどの得点に絡む活躍によって手中にした。
一方で宇佐美はUAE戦では出番がなく、タイ戦では勝敗が決した後の出場に終わった。以前のような存在感がなくなり、その影は霞むばかりだ。
「この2試合で裕也(久保)が活躍をして、前の選手は刺激をもらったと思います。裕也に限らず、選手みんながチーム全体を押し上げていけたらもっと強いチームになると思うんで、その押し上げの一翼を担えるように僕は危機感をもってドイツで頑張っていかないといけない」
宇佐美は厳しい表情で、そう言った。