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全日本3連覇「狙っていきなさい」。
宮原知子がコーチに助言された理由。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2017/01/06 08:00
全日本選手権3連覇を果たした宮原は、2015年の銀メダル以来となる世界選手権での表彰台を狙う。
練習ではうまくなれるが、強くなれるのは試合だ。
濱田コーチは「狙っていきなさいと言ったからよくなかったかなと、いらんこと言ったかなと思ったんですけど」笑って振り返ったが、そこには意図があった。
「やっぱり狙って勝てないと。絶対に最後は勝ちに行くわけじゃないですか。練習によって(技術は)うまくなれるんですけど、強くしてくれるのは試合しかないと思っているんですね。偶然勝っても強くなれるわけじゃない。だからあえて言いました」
コーチの言葉を、宮原はその言葉をどう受け止めたのか。
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「力が入ってしまいました」
「考えすぎないようにしていた」という宮原の言葉から推測すると、実際は“大会に勝ちたい”という気持ちが強かったのだろう。それがプレッシャーにならないようにと、本人は努めていた。
勝ちたいと思った場面で勝つのが本当の金メダリスト。
そんな宮原にかけた濱田コーチの言葉には、勝ちたいという思いを避けるのではなく、率直に受け止めることで精神面を強くしようという思いがあった。さらなる成長を促すための、仕掛けと言ってもよい。宮原は「力が入ってしまった」と言いつつ、濱田コーチの言葉についてこう語ってもいる。
「勝ちたいと思った場面で勝つのが本当の金メダリストだと思うので、そういう強い人になりたいと思っています」
この大会ではプレッシャーとなったかもしれない。だが、勝ちたいという心を見つめ、その思いとともに滑ったのは、より大きな舞台へ向けて、貴重な経験になったはずだ。宮原の言葉はそう物語っている。
宮原は「どの点を強くしていきたいか」との質問を、率直に答えてくれた。
「精神面かなと思います。どんなときでも、どんなに苦しくても調子が良くても、しっかり自分の演技をすることが大事だと思います。力が入るとあまり良くないジャンプになったりするので、ふだんから調子が悪くても良くても、振れ幅が大きくならないように、きっちりと回転したジャンプになるよう、頑張っていきたいです」