岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
15年ぶり女子ラグビーW杯出場決定。
岩渕GMは、残り8カ月で何をする?
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byKyodo News
posted2016/12/28 08:00
女子ラグビーW杯は2017年8月にアイルランドで開催される。男子に続き世界を驚かせることができるか。
「練習したチームが強い」は当たり前じゃなかった?
日本代表の選手たちが我慢強く、組織的にプレーし続けたことで、フィジー代表のリズムは、徐々に乱れ始めます。後半はさらに集中力が切れ始め、反則も増えていきました。
このため私自身は、前半の20分間をしのぎ切った時点で、辛抱強くプレーしていけば、日本代表は間違いなく勝てるだろうという手応えを得ていました。
同時に「しっかりと練習を積んできたチームと、そうではないチームの差が出た」とも感じていました。
かつての女子ラグビーでは、選手の体格や身体能力の差が、そのまま試合の結果に反映されるケースが多々ありました。今でも体格や身体能力の差は大きくものを言いますが、女子ラグビーという競技自体が成熟してきた結果、フィジカルな要因だけでは勝てなくなってきているのも事実なのです。
試合の流れを考えれば、もっと大差をつけることも可能だったと思います。しかし、やはり女子ラグビーワールドカップの予選では、何よりも結果が重要になります。一方的にリードする展開になりながら、最後まで集中力を切らさずに失点を0に抑えたのも、非常に評価できる点だったと言えるでしょう。
プレッシャーがかかる状況下での精度が課題。
このフィジー戦と逆の展開になったのが、12月17日に行われた第2戦目、香港代表との試合です。
日本代表は試合にうまく入ることができ、前半の10分までに10-0とリードします。またフィジー戦と同様に、組織的な守備を徹底すること、相手陣内で攻撃する時間を増やすこと、2人目のサポートを早くするといったゲームプランを、かなりのレベルで実践できていました。
ところが追加点は思ったほど奪えませんでしたし、逆にトライを奪われたために、勝利こそしたものの、最終的なスコアは20-8となっています。
端的に言うならば、その原因は日本側のミスにあります。
たとえば「我慢強くプレーする」と聞くと、多くの方は、守備の局面を連想されるかもしれません。しかし我慢強さは、実は攻撃の際にも求められます。冷静に状況判断をしながら拙攻を避け、しっかりボールをつないでいってこそ、初めてトライを奪うことが可能になるからです。
しかし香港戦では、せっかくチャンスを作りながら、自らのミスで得点のチャンスをフイにしたり、いい流れを止めてしまうシーンが何度か見られました。
プレッシャーのかかる状況の中でも、いかにミスを減らし、ベーシックなプレーの精度を上げていくか。香港戦の内容は、これから修正していかなければならない課題を、改めて浮き彫りにしたとも言えます。女子ラグビーワールドカップの本番では、小さな判断の遅れや、ボールハンドリングのミスが命取りになるからです。