岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
15年ぶり女子ラグビーW杯出場決定。
岩渕GMは、残り8カ月で何をする?
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byKyodo News
posted2016/12/28 08:00
女子ラグビーW杯は2017年8月にアイルランドで開催される。男子に続き世界を驚かせることができるか。
世界4~6位と戦うための準備は2つ。
2017年の女子ラグビーワールドカップ本大会、日本はフランス、アイルランド、オーストラリアと同じ予選プールに入ることが決まりました。
男子で言えば「ティア1」に相当する、これら3チームから勝ち星を奪うのは至難の技です。しかし、実現不可能だと言われるような目標をクリアーできるようにするために、必死の努力を重ねていってこそ、初めて日本の女子ラグビーは世界との差を縮めていくことができるのです。
では、大会までにいかなる準備をすべきか。日本ラグビー界が取り組むべきミッションは、大別して2つあると言えます。
1つ目は、世界に近づくための「環境」を整備していくことです。
そもそも日本の女子15人制代表がラグビーワールドカップの本大会に臨むのは、4大会ぶりとなります。また女子の15人制代表は、この10年間、アジア以外の国とのテストマッチを経験していません。女子の15人制ラグビーに関しては、テストマッチが定期的に行われるような制度自体が、なかなか整備されてこなかったためです。
しかし、選手が女子ラグビーワールドカップの本大会で最大限に力を発揮できるようにするためには、やはり世界のレベルを肌で知り、強豪相手に実力を高めていけるような試合を、少しでも多く実現させていくことが不可欠です。
もう1つのミッションは、強化に向けた「リソース」の共有です。
日本の女子ラグビーは、世界の強豪国に比べれば、競技人口が多くないのが実情です。しかも、男子のトップリーグのような、15人制の国内リーグも存在していませんし、15人制のチームを単独で組めるクラブチームは数えるほどしかありません。
7人制と15人制の垣根をなくすこと。
このような状況を打開すべく、私は女子の7人制代表チームの強化を15人制代表の強化に活かしていくアプローチを採用。今回のアジア・オセアニア地区予選の突破へ繋がったわけですが、今後は7人制と15人制の垣根をさらになくし、人材(選手、指導者、スタッフ)、ノウハウ、予算、大会までに残された時間といった「リソース」を、女子ラグビー界全体としてさらに有効活用していく必要があります。持てる資源をすべて投入しなければ、世界と戦うのは難しいからです。
これは決して新たな試みではありません。むしろ日本の女子ラグビー界全体が、昔から取り組んできたことでした。
女子のラグビーは、日本でも長い歴史を持っています。また歴代の代表チーム関係者は、限られた選手層や予算、活動日数をやりくりしながら、女子ラグビーの発展のために一生懸命に道を模索してきました。
ただし、かつては代表チームをいかに強化していくか、どのように活動させていくかという指針が、あまり明確には定められていない時期もありました。
そもそも以前のラグビー界では、女子の15人制代表が定期的にテストマッチを行う制度さえ整備されていなかったため、代表チームの位置づけ自体が、幾分、曖昧になっていたのです。