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ジェラード引退、次の夢は監督業。
リバプール帰還への修業期間を。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2016/12/04 11:00

ジェラード引退、次の夢は監督業。リバプール帰還への修業期間を。<Number Web> photograph by Getty Images

数々のスーパーミドルでアンフィールドを沸かせたジェラード。MLSでは下部組織の指導を兼任するなど、帝王学を着々と学んでいる。

守備的、ポゼッション……実は戦術的柔軟性が高い。

 中にはジェラードの“戦術力”を疑問視する向きもあるだろう。たしかにプレースタイルは、シュート、パス、タックルどれをとっても、パワー全開のイメージが強い。だが、その持ち味はそれぞれの嗜好を持つ各監督の下で発揮されていたことも事実だ。

 当人が「最高」と評価するベニテスは、「戦術オタク」とまで言われる監督だ。攻撃的な姿勢に魅力があるジェラードだが、対戦相手の長所を消す戦い方も身をもって理解している。敢えてポゼッションにはこだわらなかったロイ・ホジソンの下では、「負けづらい戦い方を学んだ」とも言っていた。

 かと思えば、リバプールで最後に指示を仰いだブレンダン・ロジャーズは、両者とは対極に位置するポゼッション前提の監督だ。練習を「教育」と呼んだロジャーズの下では、守備ドリルに時間が割かれたホジソン体制下とは異質だったに違いない。

 加えてジェラードは、リバプールではデビュー当初の中盤右サイドから、中盤中央、トップ下、中盤の底、そして代表では中盤左サイドと、複数のポジションをこなしてきた。自身の持ち味は変わらずとも、チーム戦術の引き出しは着実に増えていったと考えられる。

MLSを有効活用して、母国の若手に成長を促す?

 逆に言えば、代表でのスベン・ゴラン・エリクソンやファビオ・カペッロは、反面教師だったと位置付けることもできる。穏健派のエリクソンは試合中の采配も無難の域を出なかった。花形選手だったデイビッド・ベッカムに気を使い過ぎているとも言われた。逆に厳格派のカペッロは、戦術に柔軟性を欠いて4-4-2に固執。そして食事から服装まで、規制の多さはチーム内で不評だった。

 そんなイングランド代表低迷の原因として、プレミアリーグの外国人過多が指摘されて久しい。その中でクラブを預かる指揮官としては、若手にチャンスを与える意欲の持ち主であることも重要だ。

 その点、ジェラードは自らがリバプールのユース上がり。トップチームに上がるためには、外国人即戦力を蹴落とさなければならない若手の現状に同情を寄せたこともあった。また現役最後の1年半を過ごしたMLSについても、「イングランドの若手を実戦で鍛えられるレベルにある」という認識も持ったようだ。監督となった暁には、MLSの強豪LAギャラクシーとの個人的なパイプが活用されても不思議ではない。

【次ページ】 クロップは「騒ぎ立てないこと」と忠告するが……。

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