福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
「世代交代ではなく健全な競争」
サウジ戦、福西崇史はどこを見た?
posted2016/11/16 12:00
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph by
Naoya Sanuki
サウジアラビア戦は、今回のW杯最終予選5試合の中でのベストゲームだったと言っていい。
もちろん、さらにチーム力を引き上げていく必要性はありますが、そのポイントは後ほど考えましょう。
勝点3差がついた状況でのサウジ戦は勝利が絶対に求められる状況でした。そのために強い気持ちで試合に臨む姿勢、そしてチーム全体としてどう連動するのかが見えた試合でした。
攻撃面で言うと大迫にクサビのボールが入った時、2列目の両サイドを務めた原口と久保が斜めに走り込んで、中央へと入っていく意識が強かった。両サイドバックも高い位置でプレーできれば理想なんですが、中盤でボールキープできる時間が少し短かった分だけ厚みを出し切れなかった面はあります。
ただ、速く攻めるために大迫のポストプレーを最大限生かしながら前に出ていった。原口の突破力、清武の運動量とパスセンスも絡み合わせながら「今日の試合はこの形で攻めていく」という共通意識は感じましたね。久保は前半で交代となりましたが、初のスタメンがこの大一番だったことを考えれば、決して悪い出来ではなかった。
本田起点の2点目は、日本らしい連動があったゴール。
そしてハーフタイム後に久保に代わって本田が投入されました。
この交代については“珍しく早いタイミングで動いたな”とは思いました(※ハリルホジッチ体制での後半開始時の選手交代は、2次予選カンボジア戦の遠藤航→柏木以来)。
代表での経験が少ない久保がまだ未知数である点を考慮したと同時に、1点リードの状況で本田の経験値に託したのだと思います。実際、本田もサイドでボールをキープするなど、自分の持ち味のプレーで仕事をしていましたしね。
その本田が起点になった2点目は、久しぶりに日本らしい連動した形でのゴールだったと思います。本田から長友、ラストパスを軽く触った香川がペナルティエリア内に入り込んだことで、サウジのDF陣は原口へのマークが薄くなった。そこで生まれたスペースを原口が生かして追加点を取った。
お互いがイメージを合わせて奪い取った得点。選手たちが自分たちで判断してプレーすることが、本来の良さを思い出すきっかけとなるはずです。