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盗塁王・金子侑司が生まれるまで。
こだわりを捨て、周囲に愛されて。
posted2016/10/19 11:30
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
NIKKAN SPORTS
金子侑司がシーズン53盗塁を記録し、2016年パシフィック・リーグの盗塁王に輝いた。西武球団としては2010年の片岡易之(治大・巨人)以来、6年ぶりとなる盗塁タイトルの受賞である。
9月23日のソフトバンク戦で右足の痛みを訴え、24日の試合出場を回避。そのまま登録を抹消され、オリックスの糸井嘉男と並ぶ数字でシーズンを一足先に終えた。結果、糸井も数字を伸ばすことができず、タイトルを分け合うこととなった。
「最後、4試合出られなかったので、もちろん悔しい思いは残っています。でも、そこは気持ちを切り替えて、来年にぶつけようと思っています。自分がプレーしているときは、盗塁王争いは本当に全く意識していなくて、とにかく自分が盗塁の数を増やすこと、目の前の勝負に勝つことでいっぱいいっぱいだったんです。でもライオンズの方が先に全日程を終えてからは、オリックスさんが試合を残していたので、実は糸井さんの動向がめちゃ気になりました。“今日は走っているのかな”って……」
秋季練習中の金子を訪ねると、こう語って笑った。
“こだわり”がアドバイスを拒絶してしまう。
金子は今年、プロ入り4年目。入団1年目、2年目と90試合以上に出場し、レギュラーポジション獲得は目の前にあるかと思われた。しかし2015年は肩痛やひじ痛に苦しみ、その痛みをかばっている間に脇腹も痛めた。加えて鼻骨を骨折。わずか57試合出場でシーズンを終える。
「怪我、アクシデントもあったけど、去年は自分の実力が足りないことを思い知った1年でした」と振り返る。
「それまでは、自分のスタイル……ああいう選手になりたい、こういうプレーをしたいと考えてやってきた、その“こだわり”が強かった。でも、それが自分の成長を邪魔しているんじゃないかと思うようになりました」
首脳陣や先輩に様々なアドバイスをもらっても、自分の理想像にとらわれ過ぎて、なかなか受け入れられない3年間だったと語る。
「そのやり方で結果が出せていたときもあったので、なかなか吹っ切れなかったんですよね。でも結局は、成績が残せていない。それなら、自分のこだわりを手放してみようと思ったんです」