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新タイガーマスクWの危険な仮面。
「失敗しない男」が遭遇した問題点。
posted2016/10/15 11:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
10月10日。両国国技館の第0試合にタイガーマスクWが登場した。その虎のマスクは原作アニメそっくりで、ぬいぐるみのように鼻の部分が大きく突き出ていた。
このまま試合をするのか?
脱ぎ捨てるオーバーマスクではなかったのか?
マスクマンの正体が誰であるかより先に、まず、それが気になった。
覆面レスラーはマスクをかぶることで、ハンディキャップを背負う。視野は狭くなり、呼吸も苦しい。夏場は暑さとの戦いにもなる。
三重苦。それじゃあ、いいことないじゃないか?
それでも、マスクによる変身が、観客ばかりか、自らをも現実を離れて別の世界へと誘ってしまうというのだ。素顔ではできなかったことが、この変身によってできるようになることもある。人格さえ変えることができるとも言われる。あのジキルとハイドのように。魔法の薬ならぬ魔法の仮面。それがレスラーのマスクマン願望へとつながる。
こんなに鼻が突き出たマスクマンは見たことがない。
だが、この日タイガーマスクWがかぶったマスクの鼻の部分の大きさは、驚きと疑問を感じるものだった。
試しに自分の鼻の上に軽く握った拳を当ててみるといい。そうすればどれだけの視界が失われるか、よくわかるだろう。
ミスターX、ザ・デストロイヤーやミル・マスカラスの時代から、多くの覆面レスラーが来日してきた。私は、覆面王国メキシコでも多くのマスクマンを見てきた。それでも、こんな鼻の部分が突き出たマスクマンには出会ったことがない。
1980年代、メキシコにはトリオ・マラビージャというおとぎ話の世界から抜け出したような3人組がいた。そのうちの1人はピノキオをモデルにしてピノッチョを名乗っていたが、鼻は長くなかった。