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ドイツの誇りシューマッハーの志を!
ベッテルらが継承した慈善イベント。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2016/08/28 11:00
競技の枠を超えて行なわれた「チャンピオンズ・フォー・チャリティ」。リハビリ中のシューマッハーへと届いただろうか。
NBAのスターもシューマッハーから心構えを学んだ。
ベッテルが少年時代からシューマッハーのファンだったことは有名だが、カートを始める前にベッテルがあこがれていたのはNBAで神様とも称えられていたマイケル・ジョーダンだった。もちろん、ノビツキーとも交友があり、2013年のアメリカGPの前には同じテキサス州で行なわれていたダラス・マーベリックスの試合を観戦したほどである。
そのベッテルとともに立ち上がったノビツキーは、以前シューマッハーが主催するチャリティサッカーに参加した経験があった。いくつかのチャリティイベントを通して、シューマッハーからプロ選手としての心構えを学んでいた。今回、このチャリティサッカーを復活させるにあたって奔走したのがノビツキーだったと、地元ドイツの記者が明かしていた。
その言葉が嘘でないことは、F1ドライバーが中心となって構成されたベッテル率いる「ナツィオナーレ・ピローティ」(ナショナル・ドライバー組)と今回のイベントで対決したチームの名前が、「ノビツキー・オールスター」だったことからもわかる。
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つまり、このチャリティイベントは、シューマッハーの意思を引き継いで、ドイツのスーパースターたちによって復活したイベントだった。
ミハエルはフレンドリーで礼儀正しく、我々の模範だ。
ベッテルとノビツキーは、それぞれこう語る。
「彼を知っている人なら、ミハエルこそ真のファイターだっていうことをよく知っていると思う。不可能を可能にすることができる人がいるなら、それは彼だ。僕は信じる。声援を送れば、きっと願いは叶う」
「ミハエルほど、フレンドリーで礼儀正しく、そしてわれわれの模範となる素晴らしい人はいない。今回、私がこうしてイベントに参加したのも、彼のため。今日はミハエルのことを考えながら、プレーした。少しでもポジティブなエネルギーを届けられればと思ってね。だから、みんなもミハエルが戦っていることを忘れないでほしい」
そのイベントに集まったファンの数は、2万4822人。チャリティマッチが終了して、イベント参加者がピッチから姿を消した後も、スタンドを1周して数千人のファンひとりひとりにサインをしていたノビツキー。
「いつか夏休みにやろうと考えていたけど、うまくいかなかった。今日やっと果たせてうれしい」(ノビツキー)
シューマッハーの偉大さをあらためて感じた一日だった。