リオ五輪PRESSBACK NUMBER
五輪前から守備は破綻していた?
手倉森J、5失点はなぜ起こったか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJMPA
posted2016/08/05 19:00
試合前に「『ナイジェリア戦がメダルへの全てだな』という覚悟でいく」と語っていた手倉森監督。試合後は「挽回力を見せられれば」と敗戦を引きずらない気迫を見せた。
興梠「五分五分のボールが全部相手に」
ナイジェリア戦で、果たして意思統一ができていただろうか。
サイドの相手に1人がアプローチに行っても単独で終わり、後ろが続かない。中島翔哉などは一生懸命にボールにアプローチしていたが、守備が連動していないのだ。ボールを取る場所、タイミングが曖昧で、選手の中で判断が割れていた。
しかも、相手への寄せが甘くボールが奪えない。やっと奪っても、つなぐパスをミスしてしまい、カウンターを喰らう。負の連鎖が起きていた。
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「球際でまったく勝てなかった。五分五分のボールは全部相手のボールになった。もうちょい体をぶつけるとか、激しさが必要だと思います」
興梠慎三が憮然とした表情で語ったように、戦術以前の時点で負けていたのだ。
トゥーロン国際トーナメントが1勝3敗という結果で終わった時、選手は口々に「球際の激しさ、強さが世界と戦うために必要だと改めて分かった」と言っていた。得た教訓を大事な本番で活かせないのであれば、なんのための遠征だったのか。直前のブラジル戦でもそれを感じたはずなのに、それができない。国際試合で戦える選手、そうではない選手が見えてしまった。
最終予選ではあれほど戦っていた室屋が……。
また、メンタルの脆弱さも見て取れた。相手とかぶって2失点目に絡んだ室屋成は、しばらく立ち上がれなかった。それ以降は積極的なプレーが消え、腰が引けた守備で相手に再三突破を許した。ミスで落ち込まず、気持ちを強く持つメンタリティこそが国際舞台では必要だ。室屋は最終予選で戦う気持ちを見せていただけに、ナイジェリア戦での萎縮した様子は逆にショックの大きさを物語っていた。試合後のミックスゾーンも、無言で通り過ぎた。
初戦で5点を取られての敗戦、ショックは大きい。ドイツW杯やブラジルW杯を思い出してもわかるように、初戦を落とした後の立て直しはA代表ですら難しい。
手倉森誠監督でこれほどの大量失点はなかったし、見えていた課題が修正できないまま、ストロングポイントだと思っていた守備が崩壊した。4点取れたことをポジティブに考えようにも、何度もいうが、国際大会を勝ち上がるには守備が重要だ。
果たして、中2日で気持ちを切り替え、守備戦術を修正してコロンビア戦に挑めるのだろうか。