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「近未来にプロに進むヤツ」発見!
ヤマハ・鈴木博志の150kmは数字以上。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2016/07/26 17:00
22日、JR九州に敗れたヤマハは、2回戦で都市対抗を去った。この日も鈴木は1回を無失点に抑えている。
大量のご飯に、替え玉5個で10kg増やした体重。
「力みました。点差はありましたけど、社会人は4点、5点すぐですから」
痛い目にも遭ってきたのだろう。
言葉の端々、笑っている目の明るさで、いい時間を過ごしているのがわかる。
「150なんてすぐ出るよ、って言ってもらったじゃないですか、高校の時……」
覚えていてくれたのか。
「あれがすごい支えになりました。高校の時って、ほかのピッチャーがどのくらいのレベルなのか、わからないじゃないですか。なかなか比較できないから、自分がどのあたりのピッチャーなのかわからなくて、正直不安でしたから」
社会人の2年間で、体重を10キロ近く増やしたという。
「ご飯ですね、はい、米です。ラーメンなんかでも、必ず替え玉5個とか決めて。それでスピードも10キロ近くアップして」
大谷翔平にも似ているが、笑った顔は千葉ロッテのリリーフで頑張っている大谷智久のほうにもっとよく似ている。
「でも、ちょっと気になってることもあって……」
“守護神”とはいっても、入社2年目の新入りだ。両手にチームの荷物をいっぱいに持って階段を上がりながら、チラッと表情が曇った。
「短時間に急に体を大きくしたので、ちょっと苦しくなってる感じもして……。持て余してるっていうんですか、このへんからもう一度鍛え直さないと」
いずれにしても、近未来にはプロに進むヤツ。
3月生まれだから、まだ19歳。
大人たちのチームでかわいがられて、大舞台の大役をひるみもせずにやってのけて。舞い上がって、調子に乗ったこと言ってもしょうがないようなゲームセットのすぐ後。それなのに、自分で自分を引き締められる。
大人だな……と思う。
「頑張れよ」の代わりに、「頑張りすぎるなよ!」と背中を叩いて別れたが、妙になごり惜しさがあとを引く。
この“秋”までは、おそらく今のまま、後ろの短いところで投げさせてもらって体の出来具合を見計らいながら、3年目の来季は先発で5イニング、6イニングなのか。
いずれにしても、近未来にはプロに進むヤツ。数字も出せるが、速球の質が違う。来年の、迷惑がかからない時期に、もう一度ミットを持って浜松へ向かおうと決めた。
中には辛い再会もないこともないが、こんなうれしい再会がたまにあるのも、私がいつまでもブルペンでミットを構えている、1つの大きな理由なのかもしれない。