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「近未来にプロに進むヤツ」発見!
ヤマハ・鈴木博志の150kmは数字以上。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2016/07/26 17:00
22日、JR九州に敗れたヤマハは、2回戦で都市対抗を去った。この日も鈴木は1回を無失点に抑えている。
四球にヒットと苦しんでも、150kmの球には力がある。
向き合う相手は、いきなりクリーンアップだ。いずれも、社会人の“水”を長く飲んできたしたたかな戦士たちだ。
3番・落合成紀左翼手(33歳・東海大)。
初球、高く抜けた速球で“150”の表示が出た。聞いていた通りのパワーだ。速球が内外、高低に散って四球になったが、抜けた高めで150キロ、ストライクを取りにいったボールでも147、8なら、なんとかなるかもしれない。
4番・大澤裕介一塁手(30歳・法政大)。
真ん中の“147”を、ヘッドを立てて合わされて、やられた! と観念した打球が右翼手の右にライナーで飛んで、ヤマハ・鈴木光右翼手(23歳・東北福祉大)のスライディングキャッチに救われる。
5番・内藤大樹右翼手(25歳・青山学院大)。
若いが生命力あふれる左打者だ。“150”から入って140キロ後半が続いて、カウント2-2から148だ。痛烈に足元を抜かれた。
社会人球界に、久しぶりにすごいヤツが現れた。
さあ、たいへんだ……とこっちのほうが気をもんだが、ここからの鈴木博志がすごかった。
2人の打者に合計6球。6番・DH金森宏徳(31歳・慶應義塾大)から空振りの三振を奪った149キロ以外、すべて150キロ。なんという開き直りだ。
2死になって、代打の辻野雄大(23歳・白鴎大)を遊ゴロに打ち取った“150”はバットを根元から粉砕していた。
最終回の1イニングを、安打も、三振も、四球も1つずつで無失点に封じた鈴木博志。ここ数年、高校出身の若き快腕がなかなか出てこない社会人球界に、久しぶりにすごいヤツが現れた。
ダグアウト裏に、すぐ飛んで行った。真っ赤な顔をして、通路に出てきた。
ナイスピッチング! と肩をたたいたら、こっちのことがわからない。
ほら、高校の時に受けたじゃない……とミットの形をしてあげたら、ああ! と思い出した真ん丸い笑顔が高校の時のまんまだった。