サッカーの尻尾BACK NUMBER
スペイン唯一の問題はFWの“二択”。
ビジャ&トーレスの後継は現れるか。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2016/06/10 17:00
35歳にして代表シーンでの国際大会に初めて臨むアドゥリス。一花咲かせることができるか。
フィニッシャーとして優れているのはアドゥリス。
しかし肝心の「9」のポジションは、アドゥリスがモラタを一歩リードしているように見えるが、まだ読めない。
今回デルボスケはCF枠にはアドゥリスとモラタのふたりしか招集しなかった。CF候補にはアルカセルやジエゴ・コスタもいたが、そこに枠を使わず、他のポジションを強化した形だ。
アドゥリスとモラタ。
スペインのふたりの9番を見たとき、「フィニッシャー」として優れているのは、間違いなくアドゥリスだ。
活動エリアは狭いが、ポジショニングがよく、相手ディフェンダーに囲まれた状態や、数人を引き連れた状態でのトラップも抜群。シュート精度も高く、滞空時間は異常なまでに長い。スピードがあるわけでも、ドリブルが器用なわけでもないが、いわゆる最後の仕事をする9番としては最適の人材だろう。
スペインとしては、このポジションの選手に求めるのはチャンスメイクではない。その仕事をこなせる選手は他に余るほどいる。ゴールを奪うという作業に特化できるアドゥリスを、チームがどう生かせるかはポイントだろう。
スケールや伸びしろではモラタに軍配。
一方でモラタは中央でもサイドでもプレーでき、恵まれたフィジカルを持ちながら、スピードと足元のテクニックも高い。特にスペインが先制し、相手が攻めてくる展開となれば、持ち味はさらに生きてくる。スケールの大きさや今後の伸びしろでも間違いなく彼で、これからのスペインの前線の中心になる存在だ。
3人目のCFを置くのではなく、モラタとノリート、ペドロとルーカス・バスケスという、縦のスペースに強い4人のアタッカーを優先したということからも、デルボスケが頻繁に繰り返す「サイドに推進力のある選手を置き、相手守備陣を開きたい」という意図が見える。モラタはスペースがあろうとなかろうと貴重な駒となる。