オリンピックへの道BACK NUMBER
荒木絵里香の復帰は木村沙織に恩恵。
“頼れる存在”が1つではなく2つに。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/05/13 11:10
復帰した荒木(左)は「家族の協力があってできている。負担をかける分、結果を出さないと」と決意を述べた。
荒木の代表復帰は、木村の負担を大きく緩和する。
しかし昨年、ワールドカップを前にした時期には「自然体でというのは基本的に変わっていません」と言いつつ、こう続けた。
「自分のプレーはしっかりやりつつ、責任感をもってみんなを引っ張っていけたらという気持ちは日に日に強くなっています」
主将であることへの意識も少しずつ変わっていった。
ただ、プレイヤーとしてのチームでの役割の大きさに加え、主将としての責任が加わったことで、プレーに精彩を欠く試合もあった。前回の最終予選やオリンピックなど大舞台の経験も豊富なので、多くの場面で頼られる存在として、木村にのしかかる負担は決して小さくなかった。
そこに、1人のベテランが戻ってきた。ロンドン五輪時の主将だったミドルブロッカーの荒木絵里香だ。荒木はオリンピックのあと結婚や出産なども経て、4年ぶりの代表復帰である。
荒木が戻ってきた現在のチームの形は、ロンドン五輪のときの代表チームを想起させもする。
あのとき、主将としてチームを引っ張る荒木に加えて、前主将であったセッターの竹下佳江もまたチームを支える立場にいた。竹下はチームをまとめる一助となったのと同時に、荒木の支えともなっていた。それが代表チームの結束力を生む力ともなっていった。
頼れる存在が1つでなく、2つ。
木村は荒木の復帰について、こうコメントしている。
「戻ってきてくれて助けられています。いろいろと相談させてもらっています」
この言葉も、経験豊富なベテラン選手の復帰が木村にとってどれだけ大きなことかを表している。これまでより、木村にかかる重みもきっと軽減されるはずだ。それはプレーにも好影響を与えるし、ひいてはチーム全体にも波及するだろう。
出場権をかけた予選という場は、思っていた以上のプレッシャーがかかる。それは2012年の最終予選が実証している。
ましてやチームの若い選手たちは、なおさら重圧に苦しめられる可能性がある。そのとき、頼れる存在が1つでなく2つであれば、安心感も変わってくる。土壇場での踏ん張りにもつながってくる。
1人増えたベテランとともに、課題としてきたチームのまとまりが出てくれば、リオデジャネイロ五輪への切符が見えてくる。