野球善哉BACK NUMBER
中日「ポスト谷繁」論争に決着の時!
“中村武志似”の桂依央利に期待大。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/03/16 10:30
昨年一軍デビューし、初安打がホームラン。桂依央利は谷繁元信の後継者争いを勝ち抜けるか。
桂の担当は、「物言うスカウト」。
桂の担当スカウト・米村明氏は、いわば「物言う」スカウトである。昨季、米村が担当した選手が一軍の試合に出場した数は10人に上る。ただスカウトするだけでなく、その後も米村は時に選手を鼓舞する陰の指南者として、多くの選手を一軍に導いている。
その温かくも厳しい彼の眼差しが、選手の成功を後押しするのである。米村がスカウトとして担当した選手が地位を確保してきたのには、それなりの理由があるのだ。
そんな米村は、桂の持ち味をこう評する。
「(桂は)異常なくらいのまじめさがある選手です。それを買って指名しました。うちでいうたら、中村武志のようなタイプ。中村本人とも話したことがあるんですけど、武志がすごかったのは、どんな試合展開でもリードの手を抜かないところ。大差で勝っていようが、明らかな負けゲームだろうが、流したリードをすることがありませんでした。
古田や一流と呼ばれるキャッチャーの多くは、試合展開で手抜きの傾向がみえたりするんですけど、それが武志にはなかった。『お前はそこがスゴかったよな』と彼が引退した時に話しました。桂もそんなタイプです。今のうちには、そういうタイプが必要やと思ったんで指名をしてもらいました」
選手の特性を知り尽くし、必要とあれば苦言を呈す。
性格をそのまま映し出したかのような素直なリードが、どんな場面でも変わらない。リードする投手が誰でも、同じように力を出し尽くす。大学の下級生の頃はもちろん出来上がった選手ではなかったが、年を追うごとに成長を重ねていく桂を見て、その性格面が成長の要因になっていることに米村は気づいたのだ。
米村は、いつしか桂の実直な性格にほれ込んでいたというわけである。
「さすがにイップスになるとは思っていませんでしたけど、それは彼のまじめさが招いたことだった。でもそれを乗り越えたことは、評価に値することやと思います。ただ気になることがあったら、そのことについては本人に直接厳しく伝えます」
米村のスカウトとしての特徴は、この部分だ。
選手をアマチュア時代からつぶさに観察し、その後も必要と思えば直接声をかける。選手の特性を知っているからこそ、その良さの足かせになっている要素を見つけて指摘することで、本人の成長に関わっていく。