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愛媛生まれの松山英樹が「仙台出身」?
会場アナウンスと、風化しない震災。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/03/11 10:50
アメリカと日本ではチャリティへの温度感が大きく違う。松山英樹もまた、自分なりの距離感を探している。
「フロム・センダイ・ジャパン――」
PGAツアーでは選手がスタートする際、名前の前に出身地、居住地を会場にアナウンスされる試合が多くある。
松山がスタートティに立ったときはいま「仙台出身」と紹介される。
愛媛県で生まれ、高知・明徳義塾中高を卒業した。昨年からは拠点を米国フロリダに移している。東北で過ごしたのは、大学在学中の4年間だけ。だが「仙台にずっといたから違和感なんかない。でも(外国人は)誰もオレが仙台から来たこと覚えてないんだろうなあ」と言う。視線を落としてポツリと続けた。
「仙台……いいとこッスよ」
松山のバッグを担ぐ進藤大典キャディのコースメモには、白地のカバーに「がんばろう東北」の文字がある。当時、プロ野球・楽天イーグルスが配布したステッカーを貼り付けたものだ。
月日は流れても、2人がコースを練り歩く様を見て、当時に思いを巡らせる人はきっとどこかにいる。
「フロム・センダイ・ジャパン ヒデキ・マツヤマ」――。
その声はきょうも、海の向こうで響いている。