フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
欧州フィギュアで元王者が次々復活!
ペアとアイスダンスの華麗なる舞い。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2016/02/12 10:50
タチアナ・ボロソジャルとマキシム・トランコフのSPでの1コマ。怪我で昨シーズンを全休するまで欧州3連覇を果たしていた。
2位に入ったドイツの“古くて新しいチーム”!?
一方2位になったアリョーナ・サフチェンコ&ブルーノ・マッソは、ドイツの新チームである。
新チームといっても、サフチェンコはフィギュアファンなら知らないものはいない大物である。以前のパートナー、ロビン・ゾルコーヴィと世界タイトル5回、五輪銅メダルを2個手にしたベテラン選手なのだ。
ソチ五輪の後、ゾルコーヴィは競技引退を希望し、現役続行を希望したサフチェンコはフランス代表だったマッソと新たにペアを結成した。2014年9月に2人は、ドイツ代表として競っていくことが正式に発表された。
代表国をフランスからドイツに変えたマッソの苦難。
選手が代表国を変えるためには、所属していた国の連盟からの正式なリリース許可が必要になる。だがフランス連盟は、なかなかマッソをリリースしようとしなかった。
昨年の8月、フランス連盟のディディエ・ゲヤゲ会長は、マッソのリリース代として7万ユーロを要求したと報道され、ファンたちの間で連盟に対する抗議の署名運動が起きる騒ぎとなった。こういった運動が功を奏したのか、ようやくマッソがリリースされたのは、昨年の10月26日のこと。
最終的にリリース代がいくら支払われたのかは、公にされていない。
鍵となったゲヤゲ会長の真意は……。
「(新パートナーと共に)いつ試合に出られるのか皆目わからない状態で、練習を続けていくのは楽なことではありませんでした」と会見でコメントしたサフチェンコ。
特にペアやアイスダンスなどでは、選手が代表国を変えるのは、昨今では日常的に起きていることだ。だが通常、ここまでもめることは珍しい。
マッソのリリースを拒み続けたゲヤゲ会長は、これまでも何かと噂の多い一筋縄ではいかない人物である。今回最終的にマッソに許可を与えたのは、次のISU会長候補に名乗りを上げる彼にとって、これ以上の騒ぎになるのは好ましくないからだろう、ともっぱらの評判だ。