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鈴木啓太が語りつくした引退と浦和。
「だけど、寂しさがあるとすれば……」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/02/03 10:50
現役引退会見から1週間あまり。鈴木啓太は実に晴れ晴れとした表情をしていた。
周囲の「無理だろ」をひっくり返し続けた16年。
――現役を終えた今、また新しい挑戦が始まるわけですね。
「幼いころからプロサッカー選手になりたいと思っていたけれど、きっと僕の周囲の人間はそれが叶うと思っていなかったはず。プロになった時も、16年も続けられるなんて考える人はいなかったと思う。
でも周囲に『無理だろ』って言われても、僕の気持ちは揺るがなかったし、逆にそういう風に思われているんだろうなと感じながら、挑戦していくのが楽しかった。頑張ればなんとかなるというのを体験できたのが、僕のプロサッカー選手としての16年でした。
成功とか失敗とかって、そもそもの定義がわからないでしょ? 他人からは成功したなと見えても、本人がそう思っているとも限らないし。目標や夢が達成できたから、そこがゴールというわけでもないだろうし。だからこれからも、そういうチャレンジを続けていくのは、変わらないなと思います」
「これではもう、浦和レッズの力にはなれないなと」
――引退を決断されるまでの過程について伺いたい。まず10月中旬に浦和レッズを退団することを発表されましたね。このときはまだ引退は考えていなかったのですか?
「はい。浦和から出るということは、2015年の1年間をかけて、クラブとも話し合ってきていたので」
――退団の決意はそんなに前から持っていたのですか?
「2014年の秋に不整脈が出てしまい、これからどうするかという模索が始まりました。手術をする選択もあったけれど、現役選手としての年齢を考えたときにそれも難しいだろうと。薬を服用することでプレーに支障がないという手ごたえも感じられました。クラブも2015年度の契約のオファーをくれて、僕に賭けてくれた。
僕自身もやっていける、やっていこうと挑戦したんだけれど、やはり、以前のようなプレーができないことに気づいたんです。運動量やスタミナという僕の武器が発揮できない。現状の100%ではもちろんプレーしてるんだけど、かつてに比べたらどうしても足りない。これではもう、浦和レッズの力にはなれないなと」