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鈴木啓太が語りつくした引退と浦和。
「だけど、寂しさがあるとすれば……」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/02/03 10:50
現役引退会見から1週間あまり。鈴木啓太は実に晴れ晴れとした表情をしていた。
サッカーには文化とエンターテイメントの側面がある。
――鈴木啓太ですら、何年もかかったわけですからね。さて、今後のことについて聞かせてください。引退会見では、指導者ではなく違った形で浦和レッズ、サッカーに関わっていきたいと話していました。
「今は、いろんな角度からアスリートをサポートしたいと考えています。そのために、何か事業をやりたい。サッカー界に恩返しをする方法は、大きく分ければ文化とエンターテイメントとの2つがあると思います。文化面というのは、サッカーを広めるための選手育成などの活動。指導者というのもこちらに入る。
アスリートのサポートというのも文化面なのかもしれませんが、僕はエンターテイメント、つまりお金を生む活動ができればいいなと考えています。お金になるコンテンツにするために、文化としてのサッカーの向上も重要だし、アイデンティティとしてサッカーを地域に根づかせることも大切。そのためにも資金は欠かせないわけで。今はまだ小さな市場だからこそ、やるべきことがあるのかなと」
「また僕はもがくんだな、というのが楽しみ」
――視界は良好ですか?
「いえ。まったく良好じゃないです(笑)。でもそれが楽しい。良好だったらやることないでしょ、多分。わからないから楽しいみたいな。また僕はもがくんだな、というのが楽しみです。なんだか、プロサッカー選手になりたいと思っていたときと同じような気持ちというか、『新しい夢のためにさあ、どうするか』という状態です」
――振り返って、鈴木啓太というプロサッカー選手のキャリアは上出来でしたか?
「上出来でしょ。俺という選手で考えたらね。もちろんサッカー選手全体として考えて、上を見ればキリがない。でも、自分のこの能力でよくやったとは思うかな。俺みたいな選手が、浦和レッズで16年だからね。
もちろん、いろんな想いはある。だけど不完全燃焼とか、悔しさが残っているというわけじゃない。獲れなかったタイトル、行けなかったW杯。それはすべて事実だけど、これからの人生とはまったく別なものだから」