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鈴木啓太が語りつくした引退と浦和。
「だけど、寂しさがあるとすれば……」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/02/03 10:50
現役引退会見から1週間あまり。鈴木啓太は実に晴れ晴れとした表情をしていた。
「だけど、寂しさがあるとすれば――」
――大きなプレッシャー、高い緊張感、ほとばしる闘争心……。現役時代に味わった“熱”から解放されることに寂しさはありませんか?
「そうだね……でも、もういいよ、心臓に悪いし(笑)。だけど、寂しさがあるとすれば、満員の埼玉スタジアムのピッチに立ったときの、あの雰囲気を味わえないこと。もう、あれを体感できないのかと思うと、ね。あのスタジアムの雰囲気は最高だったから。
すごい大きな幸福感を味わえた。他のクラブから来た選手が『すごい』っていうのを聞いても、僕は他のクラブを知らないから、あれが当然だと思っていた。でも年々、これは特別なものだとひしひしと感じるようになった。彼らサポーターの熱や声が、僕を走らせてくれたんだと」
最後にやっぱりサポーターへの想いを語る。まるで、お約束みたいな流れになってしまったけれど、それが真実なのだから、しょうがない。
「結局、僕が浦和レッズのファンになっていたということだと思います」
浦和にとどまった理由に思考を巡らせたあと、彼はそう結んだ。そんな様子を見ながら思う。浦和レッズだったから、鈴木啓太は16年間戦い続けることができたのだと。