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多村仁志と落合GM、出会いは15年前。
打撃以上に期待されている「経験」。
posted2016/01/20 10:50
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
昨年は実績のある選手が数多く戦力外通告を受けた。三冠王を獲得した元ソフトバンクの松中信彦、沢村賞投手の元中日・川上憲伸と元オリックスの井川慶など“ビッグネーム”が名を連ねていた。
そのなかで、移籍先が決まった選手もいる。元巨人の久保裕也はDeNAに入団が決まり、元オリックスの坂口智隆はヤクルトで、元広島の栗原健太は楽天で再起を誓う。
そしてもうひとり、元DeNAの多村仁志も中日と契約を結ぶこととなった。年俸は4300万円減の300万円、背番号は215。育成選手からの再スタートである。
多村は入団会見でひとりの選手の名を挙げ、支配下登録への意欲を見せた。その選手とは、'06年にオリックスを戦力外となり、翌年のキャンプ中に育成枠で中日に入団した中村紀洋である。彼はこの年、開幕前に支配下登録選手に復帰するとシーズン20本塁打、日本シリーズではMVPに輝き見事な再生を果たした。
「ノリさんを見習って1日でも早くチームに貢献したいです」と決意を述べていたように、先人が残したサクセスストーリーは今の多村の大きなモチベーションとなっている。
38歳の多村に、中村紀洋のような復活劇は……?
多村は通算195本塁打を放っているスラッガーだ。昨季は一軍でノーアーチだったものの、二軍では71試合で打率3割1分9厘、7本塁打をマークしているだけに、中日も戦力として計算できると判断し獲得を決めたのだろう。
だからといって、中村のような大活躍を期待するのは厳しい面がある。
'07年入団当時の中村は33歳。'13年にDeNAで通算2000本安打を達成したことからも、中日に移籍した時点ではまだ計算が立った、というわけだ。
したがって、現在38歳の多村に中村のような再ブレークを望むのは本人にとってもプレッシャーになる。むしろ、中日が彼に対してパフォーマンス以上に求めているのは、プロ21年という長いキャリアに裏打ちされた技術であり、考え方ではないだろうか。