球道雑記BACK NUMBER
エースのエゴか、チーム愛なのか――。
ロッテ・涌井秀章、最多勝の真相。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPOPTS
posted2015/12/29 10:40
シーズン最終戦での涌井。オフの契約交渉では「来季は優勝したい」とチームを鼓舞する発言も。
中5日のCSでみせた力投は“準備”の賜物。
“準備”とは直前に何をしたかではなく、そこまでに何を積み重ねてきたかである。
そして迎えた10月12日、北海道日本ハムとのCS1stステージ第3戦に中5日で先発した涌井は、初回の一塁ベースカバーに入る際に転倒するアクシデントに見舞われたが、それをものともせず、度重なるピンチを切り抜け、北海道日本ハムを7回途中まで143球を投げながら1失点に抑える投球を見せている。
あの投球こそが、彼が日頃から積み重ねている“準備”の賜物であったし、彼のいう日頃の“準備”なくしてはあの投球は到底不可能だった。
大迫氏はさらにこう続ける。
「(涌井が)肩のケアをしたいと言えば、それなりの指導ができる人を見つけてあげたりね。“チーム涌井”みたいな人が彼にはいるわけですよ。あいつはあいつなりに自分の身体に合っているPNFをずっと続けてやっているし、僕はケアの方や、リハビリの方で面倒をみているし、そういうメンバーがいるからこそ、今年の成績があるんだと思います。技術的なものとか体力的なものは、すでに彼は持っているから(今後も)それで十分だと思いますよ」
「優勝しないと、FAしてきた意味がない」
2014年に、プロ入りから9年間を過ごした埼玉西武を離れ、FAで千葉ロッテに移籍してきた涌井。彼は、彼に与えられた自身の使命についてこう答える。
「今は他の球団でやるとかは全然考えていないし、ひとまず優勝しないと、優勝させないと、(僕が)FAしてきた意味がないし、獲ってもらった恩返しもしたい、というのがあります。(再来年にまた)海外FA権が獲れたとなっても、そこはFAで来た自分の使命というか、そういうのはFAした人のみんなが感じていることだと思います」
今季の契約更改時にはフロントにチームの戦力補強を直談判した。
来季は今江敏晃がチームを去り、平沢大河、成田翔、原嵩ら期待のルーキーたちが入団することもあり、チームの世代交代に拍車がかかる。そうしてチームに新しい風が吹くなかで、涌井は投手陣のリーダーとして今後は若手が言いにくいこともどんどん口にしていくだろう。そんな姿勢も見えている。
「3位滑り込み」はもういらない。
「真の強さ」を求める来季以降の千葉ロッテに改めて期待したい。