石川遼のショートゲームを高く評価するワトソン。

　もちろん石川にとっては、与えられた金言をすぐに実践できるほど、姿勢を変え、体現するのは簡単ではない。「いい言葉を頂いたけれど、『その次の日からすぐに』というのはなかなか難しかった。『ああ、こういうことを言っていたんだ』と分かってきたのは、最近のこと」

　主戦場の米ツアーの新シーズンが開幕したこの秋、石川はショットを打つ準備段階で新しいルーティンを取り入れた。ターゲットに向かって正対した状態で、2秒間息を吸い、6～8秒と長く息を吐いてからアドレスに入る。その間に弾道と体の動きのイメージを作り上げる。スイングを開始した段階では、無心でいるのが理想だ。

「1年経って、これでまたバッバから見て同じだったらダメなんだと思う。でも、今年は……そのホール、その一打に集中していないことはないと思うんだ」

　今年も2日間のプレーをともにしたワトソンは、石川を呼び出すことなく、賛辞を送って御殿場を去った。

「プレーヤーはそれぞれ自分の技術を信じるべき。リョウは、アメリカでも彼ほど高いショートゲームの能力を持っている選手は、そうはいないと思う。とくにパッティング、ボールの転がり方は本当に素晴らしい。多くの人もそれが分かるはずだ」

　ツアートーナメントの現場では、小さな師弟関係が日々いくつも生まれている。そこに生き残った結果の一つ一つが、彼らにとっての財産なのである。

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