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憧れのセナに並ぶ3回目の王座獲得。
ハミルトンの知られざる「ある記録」。
posted2015/11/01 10:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
AFLO
父アンソニーが運転する車でイギリス各地のサーキットを転戦しながらレースをしていたころ、ハミルトンがアンソニーと常に口ずさんでいた歌がある。それは『We Are The Champions』だ。
「僕がカートを始めたとき、テレビでF1を見ていたら、とんでもないドライバーがいたんだ。アイルトン・セナだよ。そのときから、いつの日か彼のような偉大なチャンピオンになりたいって、強く思うようになった。そしてそのためなら、どんな努力も惜しまないってね」
それから約20年の歳月が流れ、ハミルトンは子供のころからの夢を叶えるために、ハードルをひとつひとつクリアしていった。
セナがタイトルを獲得したマクラーレンからF1にデビュー。2008年には初めてタイトルを獲得した。昨年は2度目のタイトルを獲得。今年の日本GPでは、セナが持つ歴代優勝回数にも並んだ。
「セナはヒーローだから、僕にとっては特別」
しかし、ハミルトンの夢は完結していなかった。それはセナと同じくチャンピオンに3度輝くことだった。
「もちろん、3回チャンピオンになったドライバーはほかにもいるし、彼らのことも尊敬している。でもセナは子供のときからのヒーローだから、僕にとっては特別なんだ」
チャンピオンシップに王手をかけてアメリカGPに臨んだハミルトン。2位以下とは大きな差があり、残り4戦でハミルトンがタイトルを手中に収めるのは時間の問題だった。しかし、史上最大級の勢力といわれたハリケーン「パトリシア」が北米大陸に接近したため、週末は天候が大きく荒れ、難しい一戦となった。
グランプリ初日となった金曜日のフリー走行2回目は、落雷によってコース係員の安全が確保できないとして約1時間の遅延。その後、天候悪化によって医療用ヘリコプターの離発着ができなくなったために、セッション自体が中止となった。さらに荒天となった2日目は予選が開催できない事態となり、日曜日に延期された。