オリンピックPRESSBACK NUMBER
日本、37年ぶりに世界体操で団体金!
歴史を作った内村航平と若き選手たち。
posted2015/10/29 12:35
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Ryu Voelkel
出場8チーム中7チームの演技が終わり、残るは日本の鉄棒の最後の1人だけとなっていた。
英国グラスゴーで行なわれている体操世界選手権。37年ぶりの団体金メダルを目指し、最終演技者の内村航平(コナミスポーツクラブ)が鉄棒の前にスッと立つ。会場全体が静まりかえる。
日本がトップになるために必要であろう得点はおおむね14点ほど。普通にやれば15点台の半ばは堅い内村だけに、よほどのことがない限り、金メダル間違いなしという状況だった。
バーを握る。車輪を開始する。すると、最初の手放し技であるコバチの体勢に入ろうとしたときだった。突然、会場に割れんばかりの歓声が響き渡った。地元英国の最終演技者の得点が出て、その時点で英国がトップに立ったのだ。
英国の大歓声が轟音のように響く中で演技をして失敗した、ロンドン五輪団体決勝のあん馬を思い出させる光景――。
内村は、コバチをなんとか成功させたものの、続く手放し技であるカッシーナでバーをつかみそこねた。前の演技者であった田中佑典に続く、まさかの落下だった。日本チームの空気が一気にどんよりと曇った。
内村のアクシデントに不穏なムードが漂う……。
「僕の中では何の狂いもなかったのだけど、車輪の(次の技へ行くための動きをする)ところで英国の大歓声がタイミング良く起きてしまって……。もしかしたら技術的にずれてしまったのかもしれない」
もう一度バーに飛びついた後はしっかりと技を実施したが、英国の上を行くには13.993点以上が必要となっていた。認定されるであろう技の数や、実施の正確さからすれば14点を下回ることはないだろうと思えたが、今大会は鉄棒の採点が非常に辛い傾向にあり、不穏なムードはぬぐえなかった。
「14点いくか? これはヤバイ……」