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内川不在に選手会長・松田宣浩が燃!
盤石SBを象徴する2人のリーダー像。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2015/10/27 10:40
初戦でホームランを放ち、ソフトバンクに勢いを呼び込んだ松田宣浩。
「できる人間がいるならそいつに任せちゃおう」
今季もシーズン開幕前は優勝候補に挙げられながら、序盤は躓いた。4月8日の楽天戦まで33イニング連続無得点。圧倒的な破壊力を誇るはずの打線が沈黙し、チームの士気も明らかに下がっていた。そこで動いたのが今季から主将となった内川だった。この試合の直後、野手だけのミーティングを開き、「現状は変わらないんだから、しっかりと受け止めて戦っていこう」とチームを発奮させた。
内川は選手会長の松田との共存をこう語る。
「全部をひとりでこなす必要はないと思うんですね。ホークス自体がそうなんですけど、『できる人間がいるならそいつに任せちゃおう』っていい雰囲気ができているというか。だから、ミーティングとかは僕が主導でいいし、逆にベンチで盛り上げるのはマッチじゃないとダメなんです。僕らがそこに乗っかってあげれば、マッチもやりやすいんじゃないかなって思うんですよ」
怪我で欠場の内川の想いを、ポケットに忍ばせて。
今年のオールスター戦でこんなことがあったそうだ。
松田はベンチから乗り出しパ・リーグを盛り上げていたものの、他球団の選手たちは「松田さんってすげぇな」と、あっけにとられた表情を見せるだけだったという。
内川は今年オールスターには選ばれなかったが、チームスタッフとの会話で「やっぱりうちのチームは違うんだ」と再認識する。
「『やっぱウッチーとか、うちの選手が多く出てくれないとマッチの良さがでないな』みたいな話になったんですね。持ち味がある選手に同調する人間が多ければ、チームはまとまりやすいんです。うちにとってそれがマッチの元気で、僕らが乗っかることなんです」
その雰囲気がまさに今、現れている。
怪我によって日本シリーズの出場を断念せざるを得なくなった内川の想いを、松田はユニフォームのポケットに忍ばせた。試合前、主将のバッティンググローブを拝借した選手会長は、レフトスタンドにアーチを描き、「アッツオー!」(熱男)と咆哮を挙げた。
「内川さんの想いをもって、みんながひとつになれました」
ベンチでは内川の背番号「1」のユニフォームが見守っている。選手会長と主将が築いた一枚岩のチームは、その歩みを止めることなく、確実に日本一に近づいている。