ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
49連勝目をあげ、改めて引退を宣言。
最後まで己を貫いたメイウェザー。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2015/09/14 11:30
ボクシング界の伝説、ロッキー・マルシアノに並ぶ49連勝で引退を宣言したフロイド・メイウェザー。今後の身の振り方が取りざたされているが、まずはその偉業を称えたい。
49勝26KO。マルシアノは43KOだった。
立ち上がり、メイウェザーはその期待に応えようとしているかに見えた。初回から鋭いジャブを上下に打ち分け、左フック、そして得意のかぶせるような右を打ち込む姿に、最近は見られなかった積極性を感じさせた。しかし、そう思わせた時間は長くはなかった。
試合が中盤に入ると、メイウェザーはいつものようなボクシングを徹底した。つまりベルトのパンチが届かないポジションをキープし、距離を詰められたらロープを背負いながらL字ガードでかわすか、クリンチで逃れるというスタイルである。
後半はパンチを当てられずフラストレーションをためたベルトの攻撃が単調になり、KOチャンスが広がったものの、メイウェザーはここでも無理をしない。そう、彼はこの日も徹底してメイウェザーだった。KOを狙って逆襲を浴びるなど愚の骨頂と言わんばかりに、リスクを限りなくゼロの状態に保ち続け、楽々と逃げ切った。これで19年間のプロ生活で残した通算戦績は49勝26KO無敗。ちなみに、同じく最後まで負けなかったマルシアノのKO数は43である。
晴れ晴れとした表情で引退を宣言。
試合後のメイウェザーは、実に晴れ晴れとした表情で引退を宣言した。
「これで私のキャリアは終わった。公式に終わりだ」
その理由を問われ「私はすべてを成し遂げた。もうやることはない。お金も十分にもらった。会場に来てくれたファン、テレビを見ているファン、みんなのことが大好きだ。ありがとう」とファンに別れを告げた。
メイウェザーが本当に引退するのかについては、依然として懐疑的な見方もある。パッキャオと再戦をすれば、前回ほどではないにしても(メイウェザーの懐には約250億円が入った)、かなりのファイトマネーが生じることは間違いない。過去に「引退する」と言って、復帰したボクサーは山のようにいる。メイウェザーがそうならないという保証はどこにもない。ただし「もうやることはない」、「お金も十分にもらった」という発言は「現時点では」という注釈をつければ間違いなく本音であろう。