世界陸上PRESSBACK NUMBER
200mこそ、ボルトが最も強い距離だ!
最後は流して今季世界最高19秒55。
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph byAFLO
posted2015/08/28 12:00
200m決勝、勝利を確信したボルトは最後スピードを緩め、笑顔でゴールした。それでもタイムは今季世界最高の19秒55。北京で生まれた伝説が、さらなる凄みを増して帰ってきた。
北京五輪以降の2位との差を比べてみると……。
北京五輪以降の世界大会におけるボルトの記録(風)、2位との差、2位の選手を比較してみよう。(数字はタイム、風、2位との差)
【100m】
'08年北京五輪
9.69(0.0) 0.20 リチャード・トンプソン
'09年ベルリン世界選手権
9.58(+0.9) 0.13 タイソン・ゲイ
'11年大邱世界選手権
失格
'12年ロンドン五輪
9.63(+1.5) 0.12 ヨハン・ブレーク
'13年モスクワ世界選手権
9.77(-0.3) 0.08 ジャスティン・ガトリン
'15年北京世界選手権
9.79(-0.5) 0.01 ジャスティン・ガトリン
【200m】
'08年北京五輪
19.30(-0.9) 0.66 ショーン・クロフォード
'09年ベルリン世界選手権
19.19(-0.3) 0.62 アロンソ・エドワード
'11年大邱世界選手権
19.40(+0.8) 0.30 ウォルター・ディックス
'12年ロンドン五輪
19.32(+0.4) 0.12 ヨハン・ブレーク
'13年モスクワ世界選手権
19.66(0.0) 0.13 ウォーレン・ウィアー
'15年北京世界選手権
19.55(-0.1) 0.19 ジャスティン・ガトリン
やはり100mより、得意とする200mの方が安泰か。実際、今大会の100mはガトリンが焦ったようにラスト数歩でバランスを崩しての100分の1秒差。もちろん、ボルトが与えるプレッシャーの影響は皆無でなかったろうが、ガトリンが“自滅”しなければ、さらに微妙な勝負だったことは間違いない。
それに対して、200mはレース中に白い歯が覗くのだから、余裕のほどは推して知るべしだ。
贅沢な時間は、そう多くは残されていない。
着順は、ボルトが力を維持していけるかだけでなく、ライバルたちの成長などとの関係の中で付くので、予測は難しい。ただそんなことは百も承知で、彼は「目標は引退するまで1番であり続けること。衰えたという人がいるかもしれないが、まだ速く走れる」と自信を示している。
'17年ロンドン世界選手権で引退する意向を表明しているボルトは勝ち続けることができるのか。あるいは、王座陥落の瞬間が訪れてしまうのか。一つ確実なことは、人類が固唾を呑んで見守る贅沢な時間は、そう多くは残されていないということである。