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200mこそ、ボルトが最も強い距離だ!
最後は流して今季世界最高19秒55。
posted2015/08/28 12:00
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph by
AFLO
フィニッシュラインを前にしてウサイン・ボルトは笑った。
陸上の世界選手権男子200m決勝。コーナーを抜けた時には、2レーン内側のジャスティン・ガトリン(米国)も、まだ追いすがっていたが、直線で引き離して勝負あり。その瞬間、笑みが浮かんだ。
大会4連覇。タイムは今季世界最高の19秒55。北京入りまで、今季は一度も20秒を切るレースをしていなかったが、さして問題ではなかったらしい。
「100の優勝も自信をくれたけど、200で勝ち上がっていったことが(感覚にとって)良かった。200の優勝の方が重要なんだ。100はコーチのためにやっている」
何度もスタンド最前列まで近づいて観客と記念写真に収まるなど勝利の余韻に浸り、レース後の会見では、陸上を本格的に始めた頃から取り組む200mへの愛着と自負を強烈に滲ませた。
ボルトの「思い出の地」の記憶は美しく保たれた。
王者は王者たりえるか――。これはボルトの、もっと言えば今回の世界陸上の大きな注目点だった。
会場の北京国家体育場、通称“鳥の巣”は、ボルトがスター街道を歩み始めた出発点である。2008年北京五輪で100m、200m、400mリレーの3冠を達成。以降、フライング失格となった'11年世界選手権(韓国・大邱)の100mを除き、世界大会では、この3種目の金メダルを独占し続けている。
今大会もここまで2冠。「最強王者」の看板は誰も引きずり下ろすことができず、ボルトの「思い出の地」の記憶は美しいまま保たれた。
ボルトは大会開幕前日の21日に29歳の誕生日を迎えている。日本短距離陣で言えば、「ベテラン」と呼ばれることの増えた藤光謙司(ゼンリン)と同学年だ。今季のボルトは脚の故障などもあって出遅れ、「限界説」がささやかれたのも無理からぬことだった。
それでも無類の勝負強さを発揮し、北京でも結果を出した。この先、いつまで王座を保てるだろうか。