野ボール横丁BACK NUMBER
「大人が設計図を書かないチーム」
早実で、清宮はどこまで伸びる?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/08/06 10:40
西東京大会決勝後、取材を受ける和泉実監督、加藤雅樹主将、清宮幸太郎。1992年就任の和泉監督は、2006年に悲願の初優勝をもたらした人物でもある。一年生の清宮を迎え、早実はどのような成長を見せてくれるだろうか。
初戦は好対照の組み合わせに。
しかも、チーム自体もまだまだ発展途上だ。今年の早実は「打高投低」。打線は充実しているが、投手陣がいかにも心許ない。エースの松本皓は準決勝の日大三高戦では完封。「ほめてやりたい」と和泉を泣かせる活躍を見せたが、決勝では4回4失点で降板し、頼りない松本に戻ってしまった。
この振り幅の広さが、早実の選手らしい。しかし、ひとたび自信をつけると、彼らは、常にいい方、いい方へと振れるようになる。斎藤が、まさにそうだった。
早実の選手の成長期と成長速度は正直、読めない。
そういう意味では、初戦の組み合わせは興味深い。相手は愛媛の古豪、今治西。ここ10年で春夏通じて10度も甲子園に出場していることからも明らかなように、早実とは対照的に毎年、かっちり仕上げてくるチームだ。戦い方に安定感がある。
ただ、'07年にベスト8に進出した以外は、ほとんど1、2回戦で姿を消している。監督の大野康哉が「考えすぎかも……」とこぼしていたように、その“かっちりさ”が甲子園でなかなか上位進出を果たせない要因になっているのかもしれない。
地方大会と甲子園は、別物である。「未完」であること、「未熟」であることが、ときとして武器になりうるからだ。
そういう見方をすると、清宮に象徴される今年の早実ほど魅力的なチームもないのだ。