ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
藤田寛之が日本ツアーに辛辣提言!
「一般の方に受けないコースも必要」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2015/07/30 10:40
全英の深いラフと格闘する藤田寛之。昨年は日本ツアーで3勝をあげたが、今年はここまで0勝。46歳とシニアツアーも見えてきて、選手としての岐路に立っている。
日本ではボールを曲げる必要はほとんどない?
海外と日本のトーナメントコースの違いは、伸び盛りの若手も感じている。
以前このコラムでも紹介した22歳の川村昌弘は、アマチュア時代から特徴として“遊び感覚”でボールを左右に曲げたり、高低差を出したりしてコースを攻めるスタイルがあった。ティから見ると手前から斜め後方へと伸びていくグリーンに対し、ハザードを避けて、ピンに近づけるためにボールを曲げる。空中にせり出した木々の罠にかからないように低くても止まりやすい球を打つ。
ツアープロなら必ず必要とされる技術だが、20カ国以上を巡るうちに、川村はあることに気づいたという。「もともとボールを曲げたりするのが好きでしたけど、日本のコースじゃあまり必要ないんですよね。最近、それがやっと分かりました」
ゴルフ新興国が多い東南アジアや中国のゴルフコース、少なくともプロの試合が行われる会場は、欧米をモデルにしたダイナミックなものが多い。川村は海外と日本とで、試合に出場する際にコースへ向き合う姿勢を変えているわけだ。
日本にも選手が設計したコースを作れれば。
藤田の言葉も、辛辣なところにまで及んだ。
「(日本にいる)我々は30年前のコースで技術を磨いている。海外だと、選手が設計や監修をしたコースも多いが、日本にはあまりない。世界を知る人がコースにアイデアを加えて、プレーヤー目線のコースでやれば選手は育つかもしれない。気候条件の違いはあるが『日本ではできない』と“言い訳”をしているうちは無理だと思う」
こういった何か批判めいた話になると、周囲からは「それこそが“言い訳”だ」とか、「負け犬の遠吠え」といった具合に捉えられかねない。選手としてメジャーで活躍するための成長を考えるならば、海外に武者修行に出るべきという指摘があってもおかしくない。確かにそうだろう。数年前までの藤田もそうだった。
だが、40代も後半に差し掛かった藤田は、キャリアの転換期を感じているようだ。「今年のメジャーは今までと違って、自分の中で“引き潮”のような感じがある。でも、それも自然な流れかもしれない。一歩引いた感じで考えて、違ったものが見えてきている」
年齢には抗えないとはいえ、藤田の心境には寂しさも確かにある。それでも「経験をどうにかして活かせるようになるといい。自分には肌で感じた財産がある」と、これまでとは別の形での貢献を考え始めているのである。