ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
武藤嘉紀はマインツのスター候補。
メディア、監督、選手が既にトリコ!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/07/14 11:30
今季のマインツにとって最大の課題は、エース岡崎慎司が抜けた穴を埋めること。同じ国から来た武藤嘉紀に、クラブもファンも大きな期待を寄せている。
自分の欲しいタイミングで要求し、シュートを放つ。
練習では右MFのポジションだけでなく、センターフォワードの位置でプレーすることもある。印象的だったのは、合流してから2日目の練習でのこと。武藤は、「ヘイ! ヘイ!」と大きな声を出しながら、右サイドからセンターバックの背後のスペースへと走り出していた。そこにパスが出ると、GKが前に出てきたのを見てループシュートを決めた。
「グット、ヨッチー!」
というシュミット監督の声が響き、ファンだけではなくチームメイトからも拍手が飛んだ。ミニゲームでゴールを決めたという事実もさることながら、味方に自分の欲しいタイミングでパスを要求し、そこからシュートまで持っていくというプロセスにこそ、大きな意味があるのだ。
チームメイトもまた、武藤のことを理解したがっている。
7月11日に行なわれたドイツ5部のサルムローアとの練習試合では後半開始時からピッチに立ち、初めは右MFとして、後半26分からはセンターフォワードでプレーした。
例えば、後半19分のシーン。それまでの武藤の動きを見ていたのだろう。ボランチのラサがかなり早いタイミングで相手のDFラインの裏をめがけてパスを出した。武藤はすでに相手ディフェンダーを置き去りにしており、パスに追いつけば確実に相手キーパーと一対一の状況を作れる状況だった。結果的にはパスが長すぎてキーパーにキャッチされてしまったが、ラサは自分の非を認めるように武藤に片手をあげた。
ラサもまた新加入の選手で、ボランチのレギュラーの座を確保しようと必死だ。チーム内に息の合う選手を欲している。
後半31分にも武藤は左サイドの裏のスペースへ飛び出すと、かつてハンブルガーSVで10番を背負い、今季からマインツにやってきたバイスターからスルーパスが出てきた。相手ディフェンダーは追いつけず、キーパーと一対一に。残念ながら、狙いすましたループシュートはゴールのわずか右に外れてしまったが……。
「GKもちょっと前に出てきていたのは分かっていたんですけど、ちょっとズレてしまったんで、ああいうところの質っていうのも上げていきたいなと思います」