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オシムがFIFAゲート問題を語る。
「ブラッターを正当に評価すべきだ」
posted2015/07/01 16:30
text by
イビチャ・オシムIvica Osim
photograph by
Sports Graphic Number
メルマガ「イビチャ・オシムの『オシム問答』」。
最新号の中身をちょっとだけ……特別にご紹介いたします!
▼Lesson.107 目次
【1】〈今週の「オシム問答」〉
「揺れているFIFAが、この世界をどう再構築していくのか」
【2】〈オシムとの対話〉
「アイディアを実現し、世界を良くする力がサッカーにはある」
【3】 〈ザビエ・バレが語るフランスのテレビ放映権事情 最終回〉
「移籍ビジネス、観客動員……リーグ全体が抱えるジレンマとは」
【4】 〈オシムの教え〉
「チャンスを見つけ、逃さずに掴みきる。なでしこは見逃さない」
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【2】〈オシムとの対話〉
「バルセロナはどこかひとつだけ新しく変え、対応を難しくさせる」
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――ゼップ・ブラッターがFIFA会長を辞任したことはどう思いますか?
オシム:彼はこれまでに様々な優れた政策を実施してきた。
――その通りです。
オシム:FIFAを国連に匹敵する組織に育てたのはまさしく彼の功績だ。サッカーを世界の隅々にまで普及させた。アジアやアフリカなど、いわゆるサッカーの後進地域であったところも、今ではとても盛んになっている。優れた選手、優れたチームがそうした地域からも出てきている。たしかにそれが利権を生み出し、多くの金が動くようになった。それについては問題も多いが、彼がこれまで成し遂げてきたことは正当に評価すべきだ。彼は極めて有能なマネージャーで、サッカーのために多大な貢献をしてきたのは間違いないのだから。
ワールドカップ開催国決定が問題になっているが、今日、ワールドカップを開催するには莫大な費用がかかる。簡単に決められることではない。そして、'18年と22年をカタールとロシアに決めたのは、その2カ国が最も適切であると判断したからだ。どちらも経済的に豊かで、財政面の問題は何もない。それが両国に決まった大きな理由だ。
2002年が日韓の共同開催に決まったのもそうだろう。両国ともに経済力は問題なく、サッカーの人気も高まっている。ワールドカップを開催する能力は十分にあると判断された。開催権は昨日・今日に100円を出して買えるものではない。もっとずっと高いものだ。国をあげて動かなければ開催などできない。そしてワールドカップから得た収益で、FIFAは多くの国を支援してきた。
ブラッターはとても有能なビジネスマンだ。その点については正しく評価すべきだ。今は誰もが彼に対して好きなことを言っているが、批判するだけなら簡単だ。騒ぎが出来るだけ早く沈静化することを私は願っている。そしてこれからどう推移していくのかを見たい。
――しかしFBIとスイス司法当局が……。
オシム:それから彼が行なってきた良いことについてもしっかりと見るべきだ。悪い面ばかりを強調しても意味がない。それだけのことを彼はしているのだから。今日、どれだけの国でサッカーがNo.1スポーツになっているか。加盟国と地域の数でFIFAは国連に匹敵する。
オーケイ、モンビュウ。これでブラッターについてもずいぶん議論した。すでに言ったが彼ほどの人材を見いだすのは容易なことではない。彼は自分の仕事の犠牲になったと言える。サッカーに身を捧げながら、その犠牲になってしまった。巨大化したサッカー利権から大金を得た人間はたくさんいる。
だがブラッターは違う。彼がそうした人間たちと同じだとは私には思えない。彼は執務を執り行なうために世界中を飛び回っている。そんな生活を数十年続けながら、健康を維持していくのは並大抵のことではない。私利私欲を肥やす暇など彼にはない。イギリス人は(自分たちがのけ者にされているから)嫉妬しているのだろう。彼らは自分たちがすべてを分かっていると言いながら、後になってスキャンダルをどうにかして暴きたてようとする。