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例年接戦の桜花賞でなぜ4馬身差が?
レッツゴードンキ岩田会心の逃げ戦術。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2015/04/13 11:25
デビューした新馬以来の勝利がクラシック制覇となったレッツゴードンキ。2着はクルミナルと、チューリップ賞出走馬でのワンツーとなった。
最後の直線、すべての馬が余力を残していた。
ゆっくりと流れる馬群が3コーナーに入ったとき、先頭のレッツゴードンキと、後方4番手のルージュバックとの差は10馬身ほどあった。
前半600m通過は37秒1。800m通過は50秒0。1000m通過は1分2秒5。良馬場のこのクラスのマイル戦としては「超」のつくスローペースだ。
単騎逃げの形に持ち込み、快調に先頭を行くレッツゴードンキは、2番手に1馬身半の差をつけたまま3、4コーナーを回った。
ここまで流れが遅くなると、すべての馬が余力をたっぷり残している。後ろの馬たちの鞍上も、これだけ手応えがよければ直線だけで前をかわせると踏んだのか、4コーナーから仕掛ける騎手はほとんどいなかった。
直線に入っても、馬順はそれほど変わらなかった。
直線、騎手たちのアクションが急に大きくなった。
しかし、馬順はそれほど変わらない。後ろの馬たちだけではなく、前を行く馬たちも、ラストスパートに充分なエネルギーを残していたのだ。なかでも、もっとも活力あふれる走りを見せたのが、先頭を行くレッツゴードンキだった。
クルミナル、コンテッサトゥーレ、クイーンズリングらが脚を伸ばしてくるが、その差はひらく一方だ。
「強い馬もいたので、最後はいつ後続が来るかと思っていましたが、前半の貯金をいかすことができました」と言う岩田に操られたレッツゴードンキは、差のつきにくい近年の桜花賞にしては珍しい4馬身もの差をつけて悠々とゴールした。逃げて、上がり3ハロンを33秒5でまとめてしまったのだから、後ろの馬たちはたまらない。
勝ちタイムは1分36秒0。過去5年のそれが、新しい順に1分33秒3、1分35秒0、1分34秒6、1分33秒9、1分33秒3(すべて良馬場)だから、今年がいかに遅いタイムで決着したか、つまり、いかに岩田が巧みにスローに落としたかがおわかりいただけるだろう。
レッツゴードンキは、新馬戦以来の2勝目を、超ハイレベルと言われた桜花賞で挙げる結果となった。なお、桜花賞を逃げ切ったのは、1985年のエルプス以来30年ぶりだった。