プロ野球亭日乗BACK NUMBER
黒田博樹が円陣で仲間に語ったこと。
野球人生の「締めくくり」が始まる。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/20 16:30
初日から旧知の新井貴浩と談笑するなどリラックスムードだった黒田博樹。しかし今季に懸ける彼の思いは苛烈なものだ。
円陣の真ん中でチームメイトに語った言葉とは?
「40歳になり、先は長くないですけど、覚悟を持って皆さんと一緒に戦っていきます」
キャンプ参加初日の練習前、グラウンドで組まれた円陣の真ん中でチームメイトにこう語りかけた。
「この仲間と戦い、チームの力となりたいと円陣で思った。全身全霊を傾けて投げたい」
ただ、もう中4日でマウンドに立つことはない。信じられないような高額契約の責任を背負って投げる重圧からも解放された。「これが最後」と覚悟を決める外的要因はことごとくなくなったのである。そこでどういうモチベーションで黒田は、自分を追い込んでマウンドに立ち続けるのだろうか。
「2桁勝てなければ区切りをつけなければいけない」
こう語った結果を残すために、必要なのは自分で自分を追い込む、まさに自らとの戦いしかないのである。
あえて日本流ではなく、メジャー流のキャンプを貫くのも、今までの切迫感を身体に呼び起こすためなのかもしれない。そしてシーズンに入っても自分で自分を律してストイックにマウンドに立つのだろうが、それは想像以上に難しい挑戦となるかもしれない。
黒田ならそれを見せてくれる。そんな気もする。ただ、この新しい舞台には「愛」という言葉だけでは計りきれない、厳しい戦いが待っているのである。
そのことを一番知っているのは、黒田本人なのだろう。