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日本女子はなぜ5分以上遅くなったか。
マラソンと駅伝を巡る不都合な真実。
posted2015/02/15 10:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
昨年11月に行なわれた横浜国際女子マラソン、1月の大阪国際女子マラソンと、今夏の世界選手権のマラソン女子日本代表選考を兼ねた大会が2つ終わった。
残るは3月の名古屋ウィメンズマラソンだが、ここまでは非常に厳しい状況と言える。
日本陸上競技連盟が定めている派遣設定タイムは、2時間22分30秒。だが、横浜で優勝した田中智美の記録は2時間26分57秒。大阪では日本勢最上位の3位となった重友梨佐が2時間26分39秒。
ロンドン五輪以降、苦しんできた重友の復調は明るい話題ではあったが、日本女子の現状は、芳しいものとは言えない。
派遣タイムが厳しいから、その記録に近づけないというわけでもない。以前の日本女子であれば、決して遠くはなかったタイムだ。
振り返れば2000年代前半には、高橋尚子、野口みずき、渋井陽子と3人の選手が2時間20分を切っている。
'03年には坂本直子と千葉真子が2時間21分台を出しているし、さらに2時間22分台のタイムを持つ土佐礼子、弘山晴美もいた。当時と比べても、記録のレベルが落ちていることは明らかだ。
世界のレベルアップより深刻な、国内のレベルダウン。
北京五輪、ロンドン五輪で不振に終わったのが象徴するように、近年の日本女子は、世界の上位から遠ざかってきた。海外の選手のレベルアップもあるが、それよりもまずは国内のレベルダウンこそが大きな問題である。
その理由はどこにあるのか。
練習量の減少を指摘する声は少なくない。高橋や野口の時代と比べれば、大幅に減ったと言われる。
高橋自身も、読売新聞でのインタビューでこう証言している。
「私の時代と比べて、格段に減っていると思います」
陸連もその認識は持っている。
酒井勝充強化副委員長は大阪国際女子マラソンのあと、「練習量が少なくなっていると聞いています」と答えている。